亀の知恵

萬年も役立つような森羅万象の知恵を紹介

*

「あずる」。祖母が生前よく使っていた方言。新聞記事を読んで、久しぶりに思い出す。

   

「あずる」という言葉をご存知でしょうか?

突然この言葉について書き始めたのは、
2016年12月15日、日経新聞文化面に
《方言辞典「あずる」職場救う》
との見出しの記事が書かれていたから。

個人的にとても懐かしい言葉なのです。

阿部啓治さんという、山口県の
方言愛好家の方が書かれたものです。

この方は、ある企業につとめるかたわら、
生まれ育った山口県ならびに周南地域(県南東部)の
方言を記録に残したいと思い、
実際に「山口弁(周南地方)辞典」を出版されました。

その山口さんが、お勤めの会社の作業現場で、
よく使われている方言の一つとして
あげられているのが、「あずる」です。

《あいつはあの現場であずり回しちょるよ》

祖母は瀬戸内海をへだてた
愛媛県東予地方の出身ですが、
この「あずる」をよく使っていました。

《「あずる」とは「てこずる。窮する。もてあます」などの
意味で、より大変なときは「あずりかえす」「あずりまわす」
と表現する》。

祖母が使っていたのは「あずりまわす」でした。
祖母は20代半ばで神戸・大阪に移り、
以後亡くなるまで、そちらで暮らしました。

言葉はずっと故郷のままでした。

祖母が「あずり回る」というと、
その顔や言い方も含め、関西弁や標準語で言うよりも、
より気持ちがこもって、切実に感じたものです。

祖母が「あずり回る」というと、
その顔や言い方も含め、関西弁や標準語で言うよりも、
より気持ちがこもって、切実に感じたものです。

《足を地にすりつけるような動きを表す「足摺る」から
派生したと思われる。「彼はあの現場で作業が進まずに、
大変、困っている」という意味だ》。

四国の高知県に足摺岬がありますが、
あの足摺りが「あずる」の語源かもしれないのですね。

方言はより言葉が心に寄り添うように感じます。
祖母も近所の人と話すときは、姉たちによれば、
大阪弁を使っていたそう。

けれど、自分の本当に話したいことを語るときは、
田舎の言葉を話していたそう。
祖母のお姉さんが元気だったころは、
二人で田舎の言葉で語り合うのが
大きな楽しみだったよう。

お姉さんが亡くなって一番つらかったのは、
田舎の言葉で昔話ができなくなったこと
とも話していました。
(姉たちは大阪の生まれ育ちなので、
田舎の言葉が使えなかったので)

小さい頃に身につけた言葉はまさに母語。
その人を形作るとても大切な存在。

故郷を離れた祖母は、言葉で田舎を
思いだし、確認していたのでしょうね。

仕事がなかなかはかどらない時、
ふと「あずり回る」を思いだし、
「おばあちゃん。仕事にあずりよる」って
つぶやくと、祖母の笑顔と返事が返ってくる
気がします。

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