2015年4月26日、統一地方選の投票日ですね。
東京都中央区に住んでいます。
今回はこれまでに経験しなかったほど、
選挙戦が盛り上がっていた気がします。
個人的には、区長選、区議選ともに
立候補者数がこれまでより多かったから。
そして、家のすぐ近所に候補者の
選挙事務所が複数開かれ、候補者の連呼が
連日、聞こえてきたからと分析しています。
2015年4月26日の
朝日新聞のコラム天声人語。
投票日にちなみ、菊池寛の短編
「入れ札」が取り上げられています。
小説「入れ札」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/47858_32247.html
《その時、国定忠治には子分が11人いた。
上州から信州に落ち延びるにあたり、連れを3人に絞りたい。
そこで親分について行くのは誰が適任か、全員に無記名で
投票させることにした。菊池寛の短編小説「入(い)れ札(ふだ)」だ
▼一番の年頭(としがしら)なのに、最近めっきり信望を失った子分がいる。
後輩らに追い抜かれ、親分にも軽んじられている。誰が誰に投票するかは
わからないが、自分は3人の中に入るまい。この子分の寂しさや嫉妬、
そして入れ札にどう臨んだかを軸に物語は進む》
さらに哲学者・柄谷行人(からたにこうじん)さんの
分析が示されています。
《ここで扱われているのは、日本国憲法も保障する
「投票の秘密」だという。匿名だからこそ他人の目を
気にせず、自分の考えを貫ける。そのことが人々の
自由を最終的に守るのだ、という議論につながっていく》
「日本精神分析」の第3章「入れ札と籤引き」です。
「松岡正剛の千夜千冊」でも取り上げられています。
http://1000ya.isis.ne.jp/0955.html
なお天声人語はこの後、投票率の低下、
投票率をあげる新たな試みなどを紹介した後、
《自由な社会を守るために、どうか投票所へ。》
と締められています。
柄谷氏の論ですが、無記名投票が、人々の自由を守る
とする一方で、欠点を指摘してもいます。
無記名投票は、代表する者と代表される者を切り離し、
議員は、選んだ有権者に対して拘束を受けない。
また実際の投票においては、多くの場合、
本当の「投票者の秘密」はないとも。
代表制民主主義は、必ずしも人民の代表を
選んでいる訳ではないと有権者が不満をいだき、
反動として、独裁者を誕生させることもあると。
そこから、氏は、無記名投票にかわるものとして、
「くじ引き」を導入してはと主張されています。
古代ギリシアのアテネでは、「くじ引き」により、
市民の中から実務の担当者が選ばれ、それらの者からなる
500人評議会が、国家の政治をになっていたのでした。
「ギリシアのアテナイ(アテネ)の民主主義(制限的直接民主政治)」
民会は、 20 歳以上の市民全員が出席、一人一票で役員ストラテゴを選出。
500人評議会(執政官アルコン):30 歳以上の市民から抽選で、 500 人選出。
ストラテゴ(将軍職):任期は1 年で 10 人。民会が投票で選出。
柄谷氏は、選挙のみならず、大学、高校の入試も、
「くじ引き」を取り入れてはとも提案しています。
無用な競争・努力による無駄をしないですむから
というのがその根拠ですが、なかなかそのまま
受け入れがたい主張ではあります。
(上の作品「入れ札でも「くじ引き」を主張する子分が出ます)
さて菊池寛の「入れ札」ですが、
戯曲版もあります。
戯曲のほうの「入れ札」。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/486_19918.html
小説との違いが興味深いです。
短い作品ですので、
是非、読み比べてみてください。
さて、これから「入れ札」に行ってきます。
コメント