亀の知恵

萬年も役立つような森羅万象の知恵を紹介

*

がんがくれた贈り物=キャンサーギフト。柔らかな日の差す両国橋を渡った先で、自転車に遭遇。亡くなった友を思い出す。

   

自分の身の回りに、がんになった人、
たくさんいます。

自分より年下なのに、亡くなった人も。

その人があるとき、仕事場に来て、
「一緒にお酒を飲みませんか?」と
誘ってくれたことがあります。

仕事場の別の部屋にはワイン、
グラスなどが置いてあり、
飲めるようになっています。

「外にいくのもなんだから、ここで」
と答えたら、
「そう、外より、ここの方が静かで、
じっくり話せるかな」との返事。

早速、生ハム、チーズなどを
つまみにワインを飲み始めました。

好きな趣味の話、最近の仕事の話など、
結構、語りあい、どちらとも顔が赤くなった頃、
急に彼はグラスを置いて、
「突然で驚かれるかもしれないけれど、
親しい人には自分の口から直接言いたいと思って……」
との前置きをして、静かに語り始めました。

その内容は、朗らかな、
明るい話しぶりとは対照的な重いものでした。

末期ガンで余命わずかだと。

どう返事していいか戸惑っていると、
医師からそう告げられて、
しばらく悩んだけれど、もう現代の医学では
どうしようもないと悟った時、
一気に気分が楽になった。

そうしたら、これまで生きてきた時間、
親や家族、友達の温かさ、思いやりを
ものすごく感じられるように。

毎朝、目ざめて、寝室に太陽の光が
差し込んでいるだけで、たまらなく
幸福な気分になる。
まさに自分は今、生きているんだなと
実感できる。

そんなことを話してくれました。

末期ガンの患者のそうした心境を、
「キャンサーギフト」=「がんの贈り物」と
呼ぶということも教えてくれました。

末期ガンという命にかかわる病気になって
初めてわかる様々な価値。
がんになったからこそ、出会えた場所、人。

それらは本当は憎いがんが与えてくれた
ギフトではないか。

そんな風に思えたと。

こちらはただただうなづき、
ワインをのどの奥に
流し込むだけでした。

でも彼の嬉しそうな顔を見て、
ほっとする自分がいました。

「みんなにバカかって言われたんですけど、
新しい自転車、注文したんですよ。
届いたら見せに来ますから、また」

そういって、その日は
いつもの自転車でなく、
タクシーで帰って行きました。

彼とはそれが最後でした。

今日、少し風があるものの、柔らかな日のさす
両国橋を渡り、京葉道路を直進して、
両国のあるお店に行く途中、彼が注文したのと
同じ自転車が走り抜けるのを見ました。

不意に彼、彼との最後の話、
そして、キャンサーギフト
という言葉を思い出したのです。

 - 未分類

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

ノーベル医学生理学賞受賞の大村智さんの母校・山梨県韮崎高校の校訓「百折不撓(ひゃくせつふとう)」。

今年2015年のノーベル医学生理学賞受賞の大村智さん。 母校は、山梨県立韮崎高校 …

柳家小三治師匠がアルツハイマー病の疑いと高座で告白。

今朝2017年8月8日の東京新聞に、 《柳家小三治が療養へ》との記事が出ていまし …

人の名前が出てこなくなった高齢の知合いが、それを克服した自作のカルタとは?

この所、人・モノ・場所などの名前を すぐに思い出せないことが多くなりました。 そ …

「体は柔らかい? 体が硬いと心も硬くなるよ」とストレッチを勧めてくれた70前の知合い。脚は180度開いて、おでこが床にぺたり。

70歳前の知合いに会いました。 元気で話すスピードも速くて圧倒されました。 握手 …

買って50年。ようやく咲いた花。87歳の女性宅の庭で。アオノリュウゼツランの思い出。

少し前の新聞に、個人的にすごく 興味を引いた記事が出ていました。 福岡県豊前市に …

「首を温めなさい」とお医者さん。スマホ、パソコンで目だけでなく首も疲れている。首こりは万病のもと?

ついこの間まで、暑かったのに、 今日などは、少し肌寒かったですね。 季節の変わり …

アルファフェイバリット英和辞典第2版を読む。skate~。

アルファフェイバリット英和辞典第2版を読む。 skate (複数形で)スケート靴 …

炊飯器のご飯。どこが一番美味しい? 羽釜を使いおくどさんで炊いた銀シャリの美味さ。ご先祖様への感謝の心。

この6月末から7月ころは、 電気炊飯器の新製品が発売される時期なんだそう。 梅雨 …

記憶力を強化して脳を活性化。話(ニュース)を聞いて、自分なりに伝える訓練で認知症予防。

少し前から母は、お医者さんから聞いたといって、 脳を鍛えるために、次のようなこと …

田舎の土地や家屋を寄付しようと申し出たら、断られた。実家の不動産の処分で悩む人たち。

仕事仲間の女性。 ほぼ同じ年頃で、親も同年代。 その友人のご両親があいついで亡く …