2015年、ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智北里大特別栄誉教授。油にまみれた定時制高校の生徒の手を見て決心した「学び直し」。

スポンサーリンク
未分類

2015年のノーベル医学生理学賞の受賞者の一人に、
大村智(おおむらさとし)・北里大特別栄誉教授が選ばれました。

大村さんの受賞は、事前予想であげられていたので、
想定外ではなかったのですが、嬉しい驚きでした。

受賞が決まって、テレビ、新聞などで盛んに大村さんの
功績、経歴、個人的なエピソードが報じられています。

大村さんをよく知る方が、
ノーベル賞は功績に贈る賞だが、大村さんの場合、
人格に贈られたものでもあるといった趣旨の発言を
されていました。

これまでの経歴、人柄を伝えるエピソードを
読み、知る度にその言葉に納得。
こんなに素晴らしい方がいらっしゃるんだなと胸が熱くなりました。

そうしたエピソードの中、個人的に一番ひかれたのは、
人生の転機にもなった工業高校の夜間部で
教えていた時代のものです。

働きながら学ぶ生徒たち。
試験なのに最後に遅れてやってきた生徒。
その生徒の指は、さっきまで働いた時に、
ついたであろう油にまみれていました。

その指で懸命に答案を書いていたのでした。

先生はその指を見て、裕福な農家に生まれ育ち、
なんの苦労もなく、父親にも行きたいならいかせてやる
と大学にいかせてくれた自分を省みたのだそう。

自分はこの子のように学んでいるか。
まだちゃんと学んでいないのではないか。
そう反省し「学び直し」のため、
東京理科大学の大学院に進学。
昼は大学院に通って学び、
夜に定時制で教えていたのです。

卒業後、母校の山梨大学に戻り、
ワインなどの研究で微生物に出会い、
北里研究所に移り、研究を続け、
アメリカの大学に留学。

製薬会社から研究費を出してもらう代わりに、
研究成果を提供する産学提携を行い、
数多くの功績をあげたのでした。

製薬で得た250億とも言われる特許料は、
研究室や北里大学メディカルセンター設立などに使い、
それによって研究が進み、次々と桁外れの成果をうんだそう。

また小さい頃、教員だった母が教えたり、
家に飾っていた絵を見て、芸術に目覚め、
私財を投じ、日本の女性画家を支援。
それらの画家の作品を集めた美術館を設立し、
韮崎市に寄贈されています。

科学と芸術は互いに補いあう関係。
芸術(絵)に心を癒やされ、慰められたと
語ってお出でです。

韮崎大村美術館
http://www.nirasakiomura-artmuseum.com/index.html

〇忙しかった母にかわり育ててくれた祖母。
「人のために働きなさい。役に立ちなさい」
という言葉を聞き、それを実現した。

〇美術館のむかい、自宅敷地内に
「武田乃郷(たけだのさと) 白山温泉」を作った。
さらに蕎麦屋さんも。
近所の人が集まれる場所を作りたいというのが作った理由の1つ。
ご自身も温泉には月に一度ほど来ているそう。

《温泉、そば屋、美術館 大村智さんが故郷につくった三点セット》
http://apital.asahi.com/article/story/2015100600001.html

〇公益社団法人山梨科学アカデミーを創設
出身地の人々に向け、科学啓発に取り組んでいる。

〇農家の長男、農業は科学に通じる
子どもの時から農作業を手伝った。
そうした体験が科学に通じる。
農作業をしたことで、実験の段取りや予測に役立ったち言う。

〇大村先生はそもそもどんな研究をしているの?
土壌の中に含まれる微生物を研究。
そうした微生物が生成する物質の中から、
有用なものを探し出している。
なお先生と研究室は微生物53種を見つけ、
それらが作る471種類の化合物を分離、構造を解明。
うち26の化合物が医薬品や農薬、研究に使われている。
他の研究者、研究施設とは桁違いの業績。

〇ノーベル賞の受賞理由は?
「寄生虫によって引き起こされる感染症の治療の開発」
具体的には、イベルメクチンの発見・開発。
これは、アフリカなどの熱帯地方に蔓延する
河川盲目症(オンコセルカ症)の特効薬。
当初この薬は牛などの動物の寄生虫を退治する抗生物質だった。
さらに人のオンコセルカ症などに効果があることがわかり使われている。
この薬のすごいところは、少量のイベルメクチンを1回、
口から投与するだけで効果があること。
世界保健機構(WHO)が、大村先生と共同研究し、
薬を製造しているメルク社から無償提供を受け、
年間3億人の人々に投与。
これにより、多くの人(40万人とも)が病気、失明の危機を免れている。
WHOは2020年にはこの病気は撲滅すると予測。

ほかにフィラリア症、疥癬症、
沖縄地方や東南アジアの風土病である
糞線虫症の治療薬としても効力がある。

〇「受賞していいのか」とためらい
自分がもらってよいのか。
自分は何か物質を作り出した訳ではなく、
微生物がもつ力を借りて、整理しただけ。

〇スポーツマン スキーのクロスカントリー選手
高校では、卓球部、スキー部の主将。
スキーのクロスカントリーに夢中に。
国体にも2度出場。
定時制高校で教えていたときは、体育も指導。
体力的にも精神的にも厳しい環境に身を置くこと。
人まねをしないことを学ぶ。

〇農家を継ぐはずが、高校3年の時に盲腸に
高校3年の春、盲腸になり、仕方なく本を読む毎日を送る。
父親から「勉強したいなら大学へ行っていい」と言われ、
大学進学を決意。
それから懸命に勉強して、地元の山梨大に入学。

〇地元の学校の先生になるはずが
大学卒業後は、地元で先生になるつもりだったが、
なんとその年、山梨県では教員の募集なし。
なので、仕方なく東京都の教職採用試験を受け、工業高校の教師に。

〇成功した人は、人の何倍も失敗している
成功した人は、あまり失敗を言わない。
人より倍も3倍も失敗していると思う。
1、2回失敗したからといって、どうってことない。
失敗を繰り返して、やりたいことをやりなさいと言いたい。
だが、人の真似をしての失敗はなんの足しにもならない。

〇趣味はゴルフ イベルメクチンの土はゴルフ場(の近く)で
抗寄生虫薬「イベルメクチン」は、静岡県伊東市の
川奈のゴルフ場の土の微生物から発見された。
ゴルフをして芝の上でとったと思われているが、
そうではなく、木の近くで採取した。

〇奥様は15年前になくなった。
今回の受賞を最初に報告した。
奥様は、ずいぶん前から
「あなたはノーベル賞をもらう」と言っていたそう。
12月の授賞式には、いい写真があるので、写真ぐらいは持って行きたい。

〇財布に必ず入れているのは?
土の採取用ポリ袋と亡き妻と長女の和服姿の写真。
どこに行った時も、スプーンで土を採取。
ポリ袋に入れて持ち帰り分析。

以前、NHKの番組で、大村先生ではなかったと思いますが、
微生物ハンター、抗生物質ハンターとして、
日本や世界各地の土を採取する研究者の活動を紹介した
ドキュメンタリーがありました。

クローズアップ現代、
《2006年5月18日(木)放送 微生物ハンター》
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_2243.html
(この他にも見たことあるなー)

NHKサイエンスZERO
《No.491夢の化学工場“放線菌”
2015年1月11日 放送》
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp491.html
《10min.ボックス 理科~生物的分野 [理科]》
https://www.nhk.or.jp/rika/10min2/index_2014_020.html

〇山中伸弥さんも伝記を読むまで知らなかった
同じノーベル医学生理学賞を受賞した山中伸弥さん。
この大村先生のことを知らなかったそう。
何年か前、知人から、すごい人がいると伝記を渡され、
初めて知ったそう。

〇上司の授業の黒板消しも仕事だった
から北里研究所には「技術補」として採用された。
これは実験の助手やデータ集め、さらには研究所員の雑用も行う。
研究所員が北里大学で講義する時の準備、黒板の板書消し、
論文の清書も仕事の一部だった。
実験と研究で成果をあげ、助教授そしてアメリカ留学へ。

大村智(英語のサイト)
http://www.satoshi-omura.info/index.html

〇北里研究所 北里柴三郎は第1回ノーベル賞候補
大村智さんが所長をつとめていた北里研究所。
北里柴三郎ゆかりの研究所。ドイツへ留学し、ロベルト・コッホの
もとで破傷風菌の純粋培養に成功。さらに破傷風菌の毒素を弱める
「抗毒素」を血液中から発見。これを注射することで感染症の
症状を抑える「血清療法」を開発した。(抗毒素は現在「抗体」)
こうした功績から、第1回ノーベル賞の有力な候補と言われたが、
受賞はできなかった。
それから1世紀。世界三大研究所の1つ、北里研究所は、
念願のノーベル賞を受賞した。

プロフィール
この記事を書いた人
niki

35年以上にわたり、TV、ラジオ、
イベント制作に携わる。30年余
り、放送関係の専門学校講師を
勤め、企画書、台本の書き方を
教える。10年余りホテルの食に
関するHPの制作、コンサルタ
ントも、行う。新聞は小学4年生
から読み始め、多い時には13紙
を愛読。
ブログ「トクダス」
https://nikitoki.blog.ss-blog.jp/
ブログ「人生やり残しリスト」
https://yarinokoshi.blog.ss-blog.jp/

nikiをフォローする

Amazonサーチ
未分類
スポンサーリンク
シェアする
nikiをフォローする

コメント