あなたは「がめつい」
という言葉をご存じですか。
「おまえ、がめついなー」と言われたら、
いやな気持ちになるのでは。
この言葉について、2018年9月2日の
読売新聞の編集手帳が書いています。
冒頭、舞台「がめつい奴」のあらすじを説明します。
《大阪の下町で簡易宿泊所を営む傍ら、高利貸しも商う
お鹿婆さんは梅干しのかめにためた金を数えるのが
何よりの楽しみだった。彼女を真ん中に金への欲心を
むき出しにする男女を描いた》と。
この舞台「がめつい奴」は、
《1959年、東京の芸術座で開幕し、20万人を
集めるヒット作となる。
がめついは作・演出を手掛けた菊田一夫の造語
というのが通説だ。だが人気の余波か、
「大阪方言から出た俗語」と記した辞書もあった。》
大阪人=金にシビアという悪印象を決定づけた
と嘆く地元識者もいる。
大阪、神戸に祖母を始め、
叔母、従兄弟など多くの親戚がいます。
小さい頃から何度も関西方面を訪れています。
その中で「がめつい」を
数多く聞いた記憶があります。
なので、上の辞書のように大阪方言だと
信じていました。
辞書を引いてみました。
精選版日本国語大辞典、広辞苑、
明鏡国語辞典を見ると、通説通り、
舞台「がめつい奴」から流行語になった旨、
記載されています。
その中でおやと気になったのが、明鏡国語辞典。
俗語と記され、《昭和三四(一九五九)年、
菊田一夫の戯曲『がめつい奴やつ』から流行し、
広く使われるようになった語。大阪の方言を
もとにした造語という》。
なおデジタル大辞泉でも
《[補説]関西方言をもとにした造語か。
昭和34年(1959)初演の菊田一夫の戯曲
「がめつい奴 (やつ) 」から流行語として広まった。
[派生]がめつさ[名]》とあります。
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/45169/meaning/m0u/
菊田一夫は、大阪もしくは関西の方言を
もとに「がめつい」を作ったのか。
ただ大辞泉の場合は「造語か」として、
断定はしていませんね。
方言をもとに造語したすると、
その元となった方言って何なんでしょうね。
さらに調べると、「がめる」=盗む、ごまかす、
隠しためるから、「がめつい」が生まれたと。
「がめる」は、小さい時に知り、
使ったことがあります。
明鏡国語辞典、広辞苑などに出ています。
さらに精選版日本国語大辞典には、上の意味の他、
《② マージャンなどで、大きい手であがろうと無理をする。
▷ 古川ロッパ日記‐昭和一一年(1936)七月一五日
「又々麻雀にひっかかってしまひ〈略〉
しきりにガメって、しきりに負けた」》
この項目の第一義の「盗む。ちょろまかす」の
用例の一つとして、野坂昭如の「初稿・エロ事師たち」から、
《「ガメたフィルムを三本、それぞれ言い値で買わせると」》
を上げています。
野坂昭如は、各地を転々としていますが、
神戸出身といってもいいので、「がめる」は
関西の方言かなとも思うのですけれど、
どうなんでしょう。
(なお下の用例の古川緑波は東京出身)
実際、インターネットで調べると、北海道、
東北、関西、四国、中国地方、九州など
広い範囲で使われているようです。
(それぞれの記載者が「方言」としている)
こうした俗語、方言の語源探しというのは、
案外難しいですね。
造語の場合は、造りだした本人の証言なり、
記述があれば、確かなのですが……。
Weblio「がめつい」には、
https://www.weblio.jp/content/%E3%81%8C%E3%82%81%E3%81%A4%E3%81%84
《大阪弁》の項目に
《麻雀用語の「がめる(無理に大役を作る)」と
「がみつい(抜け目ない)」の合成造語。「がめ」は
スッポン、「つい」は付いているの意。もともと
大阪の言葉ではないが、戯曲から全国に広まった。》
いやー、もう何がなんだか。
《★関西方言の「がみつい」と俗語の「がめる」との
結合からか<国語大辞典(小)> 》
http://www.geocities.jp/tomomi965/ko-jien02/ka05.html#kame
今、手元に日本国語大辞典がないのですが、
そこに上に記しているなら、何らかの根拠は
ありそうですね。
しかし「がみつい」を関西弁として
詳しく紹介した情報がなかんか出てきません。
《「ガメつい」とは、どのような意味ですか?
また関西弁か??》の回答中、
《子供の頃大阪市北部で「がみつい」をよく使っていました。
例えば、「あいつはがみつい顔やな。」(いかつい)
「がみつい奴やな。」(喧嘩が強そう、悪そう、等)
と言うふうに。》
続いて、《大体ニュアンスは分かるのですが「がめつい」って
説明するとどういう意味ですか? ○○さんは
がめつい人だ←この場合どういうがめついでしょうか??》
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q104440295
の回答中には、
《大阪下町育ちですが、昭和20年代中頃から使われていました。
私たちは、「がみつい」と言っていました。
例えば、
「がみつい奴(やつ)」 - 喧嘩っ早い、喧嘩の強い、
いかにも「うるさそう」な輩。
「がみつい顔」 - いかつい、喧嘩の強そうな人相の顔。
「がみついことを言うな。」 - 厚かましい、欲の深い
ことを言わないで下さい。
菊田一夫の映画より前に使われていた「がみつい」が
訛って「がめつい」に変わったと推測します。
地元では未だに「がみつい」です。》
これらを信じるなら、「がみつい」は大阪方言で、
「がめつい」の元になった可能性がありますね。
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