自分のような世代にとって、家電メーカーの
シャープと言えば、言葉は悪いけれど、
松下、日立などに劣る二流メーカーというイメージでした。
実際、それは価格に現れていて、例えばシャープの
ブラウン管テレビは松下、ソニーなどの製品より
ずいぶん安く、また家電販売店の安売りの目玉製品でした。
そんなブランドイメージが少しずつ
変わり、向上していったのは、
液晶事業を手がけたころからでしょうか。
正確に「目の付け所がシャープでしょ」との
キャッチフレーズがいつからか知りませんが、
液晶テレビ、ビデオカメラ、ノートパソコンでも、
性能が良く、新しい機能がついた製品が次々と開発され、
販売されました。
実際、そのころ、シャープの製品を購入しました。
国産の高性能を意味する亀山モデルの液晶テレビ。
製品に貼られたステッカーは光り輝いて見えました。
世界一を誇った液晶のシャープが、
現在のように台湾企業の傘下に入るとは。
一消費者でシャープとは製品の購入以外、
全くの利害関係を持ちませんが、信じられない思いです。
2016年3月1日、日本経済新聞に次のような見出しの
記事が出ていました。
《シャープ追い詰めた「社徳」のなさ 編集委員 西條都夫》
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO97828740Z20C16A2000000/?dg=1
「社徳」とは聞き慣れない言葉ですが、
筆者の西條さんは、次のように書かれています。
《社徳のある企業とは立派で尊敬され、
だれもがその企業と取引したい、提携したい
と思う存在である。逆に社徳のない企業とは
自己中心的で威張っており、できれば付き合い
たくない存在だ。》
シャープが現在のように追い詰められたのは、
《大型投資の失敗や経営陣の「無為」などいくつか理由があるが、
「社徳のなさ」もその一因だったと思われる。》
と分析されています。
具体的にシャープの社徳のなさを示す例があげられています。
液晶製造装置を製作していたコマツにシャープは特別仕様の
製品を求めたが、カスタマイズのお金を支払ってくれなかった
というもの。
日立製作所が、液晶事業の再編を打診するため、
シャープを訪問したが、
《「完全に上から目線の対応で、
けんもほろろの扱いだった」と》いう例。
そして、これはネットでもよく書かれていることですが、
シャープの堺工場から液晶パネルを購入する契約を結んでいた
ソニーと東芝に、その供給を制限したこと。
丁度、時代は、家電エコポイント制度のおかげで、
液晶テレビが大変、売れている時。
シャープは、自社の供給を優先し、顧客であり、
ライバルであるソニー、東芝への供給を制限したのですね。
これらによって、シャープは取引先、業界での信頼を失い、
窮地になっても助けてくれるところがなくなって
いったのかもしれません。
現在の滋賀県、近江を拠点にして
全国で活躍した近江商人。
その哲学は「三方よし」、
すなわち
「買い手よし、売り手よし、世間よし」
と言われます。
売り手の自分だけが得をしては、商売は続かない、
買っていただいたお客さまの買い手も得があり、
そしてさらには世間も得をしなければとの理念です。
「WIN WINの関係」という言葉もありますが、
それよりさらに進んだ考えなのかもしれません。
最近では企業の社会的責任CSR(corporate social responsibility)
という考え方が唱えられて、浸透しつつあります。
会社は利益を追求する組織ですが、
社会的な存在であり、社会によって
成立させられている。
そのために会社も個人と同じく、社会に
責任を持ち、還元すべきものは還元しなくてはいけませんね。
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