「空茶」という言葉。
ご存じですか?
2017年5月15日、毎日新聞の
《週刊漢字》の出題3問のうちの
2問目として出題されていました。
(和敬清寂、空茶、茶腹も一時)
空茶(からちゃ)は、
《茶菓子がなくて茶だけを出すこと》を言います。
小さい時、父方母方のそれぞれの祖母から、
この「空茶」と言う言葉を聞かされました。
「空茶にしてはいけない。
お茶には必ず茶菓子を添えなさい」と。
もし菓子がなければ、漬物でも佃煮でも良いから
なにかお茶請けとなるものを出すことと。
どうしてもない時は、
「空茶で失礼ですが……」と
言葉を添えることと。
逆に、よそのお宅に伺う時は、
相手に負担にならない手土産を
持っていくこと。
それが「お持たせ」になってもいいからと。
ちなみに「お持たせ」とは、
この頃よく使うのでご存じかと思いますが、
客が持ってきたものを、
その人にもてなしとして直接出す時に、
もてなす方が言う言葉です。
例えば、
「おもたせ(もの)で恐れ入りますがどうぞ」。
あとよく言われたのが、
「一杯茶はやめよ」(「一杯茶は縁起が悪い」)。
お客さまにお茶を一杯だけ出すのは、
縁起が悪く、不吉なので、
必ず2杯目を入れること。
お茶は、なみなみ入れるのではなく、
七分目くらいまでにし、少なくなったり、
さめてしまったら、差し替えをお持ちする。
(これで2杯となる)
これは、ご飯やお汁も同じで、
一膳飯・一杯汁で、
大盛りつぎきりというのはダメとも。
また味噌汁などのお汁の場合、
いただく場合の話ですが、
「馬鹿の三杯汁」とも教わりました。
あなたは聞いたことがありませんか?
いくら美味しくても、
3杯目を所望してはいけないという意味です。
「居候三杯目にはそっと出し」なんて
川柳・ことわざがありますけれど、
これは人の家に世話になっている引け目から、
食事に限らず、なにかにつけ遠慮がちになること
を言います。
祖母達は、よそ様のお宅に伺って、
いくら勧められたからといって、
調子にのってどんどんおかわりしては
いけないと言っていましたね。
お茶を出すときに戻れば、湯飲み茶碗のみで
茶托をつけずに出すこともしてはいけないと。
今、振り返って見れば、時代に合わなくなった
迷信のような教えもありますが、
ためになった役立ったと思う教えが多いですね。
もっとも母方の祖母は、柔軟な面もありました。
祖母の甥っ子兄弟が、
お茶屋を始め苦労していた時には、
物心両面で援助をしていたよう。
その後、二人は、缶入り・ペットボトルの
緑茶を発売し、商売を大きく発展させました。
その際に祖母は、マナーの面からは、
受け入れられないと感じていたものの、
二人の努力ぶりや心根を知っていたので、
手軽にどこでも飲めるようになったという
商品自体の利点は認めていたことを
覚えています。
ただ祖母自身はもちろん、
姉たち、そして私には、ペットボトルの
お茶を飲んでもいいが、直接、口をつけて
飲むことだけは決してしないように
と注意していました。
父方の祖母は、空茶にならないように、
金平糖を水屋の奥に必ずしまっていました。
なくなると近所のよろず屋で買い求めるのですが、
私がいる時は必ず一緒に連れて行ってくれ、
帰りのお土産になるお菓子を買ってくれたものでした。
「空茶」という言葉から、
二人の祖母のことを
思い出しました。
ぬるめにいれた緑茶で一服することにします。
おっと、お茶請けを忘れずに。
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