2015年4月28日、東京新聞のコラム筆洗。
「三塁の上で生まれた」との表現を取り上げています。
この表現を目にされたり、
聞かれたかたはいらっしゃるでしょうか?
《「あいつは三塁の上で生まれた」。米国政治の世界では、野球を比喩に
使った表現がしばしば登場する。「三塁生まれ」も時折、耳にする》
《政治家への痛烈な「悪口」である▼裕福な家に生まれ、甘やかされて
育った人間をいう。父親が大統領だったブッシュ前大統領も
そう批判されていた▼最初から三塁にいれば、得点を挙げるのはたやすい》
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2015042802000114.html
ブッシュ大統領をはじめとして、アメリカでも
2世議員が増え、その人たちを揶揄する意味で
この「三塁で生まれた」という表現が誕生したようです。
池澤夏樹さんの「終わりと始まり」には、アメリカにも
二世議員が増えたことを揶揄して、次のような表現がされた
と例をあげています。
《「あの人たち、自分が三塁にいるから三塁打を打った
と思っているけれど、違うのよ、三塁で生まれただけなの」》
この「三塁に生まれた(born on third base)」という表現は
新しいようですが、昔から言われているのが、
「銀のスプーンをくわえて生まれた
( born with a silver spoon in their mouth )」。
《Some people are born on third base and
go through life thinking they hit a triple.
Barry Switzer》
http://www.brainyquote.com/quotes/quotes/b/barryswitz104243.html
「銀のさじを」の表現は、ヨーロッパ起源のよう。
新大陸発見前、銀は非常に貴重なもの。
銀の食器は一つの財産だったのですね。
銀は毒(酸)に反応して変色するところから、
銀のスプーン、ナイフ、フォークは、
暗殺などを恐れた高貴な身分の人たちが
使っていたとされています。
さらに銀には魔除けの力があると信じられてもいました。
こうしたところから、銀のスプーンは、富の象徴であり、
「食べ物に困らない」「幸せをすくう」
という願いを込めた品として大切にされたよう。
このため、ヨーロッパでは、赤ちゃんに、
銀のスプーンをプレゼントする習慣が生まれたとのこと。
「ドン・キホーテ」からの表現。
《z032 (06月26日) be born with a silver spoon in one’s mouth 「生まれながらに金持ち」》
http://www.eigo21.com/etc/kimagure/z032.htm
日本だと、「乳母日傘(おんばひがさ)」という表現が、
「三塁で生まれた」「銀のさじをくわえて」に
あたるのでしょうか?
2020年9月9日、追記
この一週間、特に9月9日に
このエントリーへの
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