スポーツ選手、芸能人、文化人など、
何かをなしとげ、知られるようになると、
きまったように紹介されるのが、
小学校の卒業文集。
例えば、全豪で活躍中の錦織圭選手は、
「ぼくの夢」と題して、
《この六年間で一番思い出に残ったことはテニスで日本一になったこと》。
練習での苦労、工夫、テニスが好きな理由などを書いた後、
《これからは誰だれにも負けないように、苦しい練習も絶対にあきらめずに
全力でとりくんでいこうと思います》と努力することを誓い、
最後に《夢は世界チャンピオンになることです。
夢に向かって一歩一歩がんばっていきます》としめています。
今、彼はその目標に近づくため、地道に努力を積み重ね、
手の届きそうなところまできています。
「栴檀は二葉より香(かんば)し」
という言葉がありますが、優れた人は、
小さい頃から、なにがしかの志をもち、
それにむかって力を尽くしている
と言えるのかもしれません。
知合いが、田舎に帰り、実家の片づけをしたそう。
今はやりの「親の実家の片づけ」=「親家片(おやかた)」なんて言うそう。
親が長年、ためこんできたがらくたや、
生活用品を整理するとともに、
自分が暮らしていた時代の不要品を
片づけるという目的もあったそう。
自分の勉強部屋は、ほとんど当時のまま。
ガラス扉のついた本棚とその下の引き出しは、
小中高時代に本、教科書、参考書などがそのまま
置いてあり、引き出しの箱の中には、通知表、
さらには、試験答案、作文、絵、文集などがきれいに
整理されて保管されていたといいます。
学年順に並んでいたので、おそらく
母親がそうしたのだと気づいたとのこと。
昔の漫画、本などはどんどんと捨てられたのですが、
自分が書いた作文、答案などは、ついつい見てしまい、
片づけの手がとまり、座り込んで、読みふけったとのこと。
そして、小学校の作文、卒業文集、さらには、
中学、そして高校の作文には、それぞれ、
「将来の夢」「未来の自分に」といった
タイトルのものがあったそう。
書いた本人もすっかり忘れていたくらい。
読み返しているうちに、小学校、中学校、
高校とそれぞれの時代に自分が考えていたこと、
当時の状況がどんどんと思い出されてきて、
自然に涙があふれてきてとまらなくなったと。
自分は今は、昔、夢として書いていた職業とは、
全く違う職業についている。
でも昔はそれに向けて、少しは努力したんだなー
と感慨にふけったよう。
そして、今の自分から、過去の自分に、
作文(手紙)を書きたくなったとも。
「君が書いた夢とは違った職業についているけれど、
自分なりに幸せで結構、頑張っているよ」
そんな話を同級生にしたら、その人の同じような
経験をしたそう。
そしてまだまだふけこむ年でもない。
今もう一度、「未来への自分」にあてた作文を
書くべきではと言われ、励まされたといいます。
おそらく小さい時の夢を
かなえられなかった大人の方が多いはず。
けれど夢は変わってもいいから、いくつになっても、
自分なりの夢を持ち続けることは、今の生活を
より充実させることなのかもしれませんね。
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