2015年6月26日の朝日新聞に掲載されていた記事。
いろいろと考えさせられる事件を報じていました。
《36年前の不倫、介護中怒り 夫を暴行死、妻に執行猶予》
という見出しがついています。
東京地裁で判決が出たその事件は、
妻による夫の暴行致死事件です。
2014年7月、介護していた、湯治79歳の夫を、71歳の妻が、
殴って死なせ、傷害致死の罪に問われていました。
裁判員裁判で、裁判長は、
懲役3年執行猶予5年(求刑懲役4年)を言い渡しました。
この暴行に至った理由。
判決・記事によれば、夫の36年前の不倫でした。
この2人は、今からおよそ50年前に結婚。
夫は大手銀行員で、病気がちだったため58早期退職。
けれどそれまでの貯蓄と年金で生活に不自由することはなかった。
ところが、2014年2月、夫は胃がんなどの手術をし、
介護が必要な状態になりました。
妻が自宅で介護をしていたのですが、
身長180センチ近い夫を、
151センチ、体重およそ40キロの妻。
精神的にも肉体的にも大変だったようです。
妻は次のように証言しています。
「あまりに急な介護で心の準備が追いつかなかった」
そのような状態で介護にあたっていた時に、
思い出したのが、夫の裏切りです。
1979年、夫45歳、妻36歳のときのこと。
ゴルフを理由に泊まりがけするkとおが多くなった夫。
妻はある日、夫の名刺入れから女性の写真を発見。
夫は不倫を認め謝罪したものの、その後も交際は続き、
あるとき夫の職場前で待つと、20歳ぐらいの女性と
一緒に出てきたそう。
同じ電車にのり、そこで妻は相手の女性にも詰め寄ったところ、
夫は、「まあ、これぐらいで」と返したとのこと。
妻は20歳の時に結婚。
夫以外の男性との交際経験はなし。
妻は、不倫がわかってからも、
子どもたちにけんかしている姿を見せまいと、
夫を責めたてることはしなかったと。
妻としてのプライドもあり、夫の不倫は、
胸にしまったはずでした。
ところが、おととしから、思い出話をする中で、
夫婦の間で、この不倫が話題に出てきたとのこと。
夫は、不倫相手との交際の詳細を打ち明けたそうです。
うーん。
その告白、それに介護の不安が加わり、
夫を殴り死亡させることになったと説明しました。
保釈後にカウンセリングを受けた被告は、
次のような心境を文章にしたそうです。
「もっと夫に頼って、甘えれば良かった」
「お互いに本心をぶつけ合う機会だったのに、逃してしまった」
この事件をどう考えればいいのでしょうか。
妻の心の中を覗くことはできませんが、
妻自身も書いている通り、
自分の心のことより、子どもや夫のことを考え、
不倫の傷のふたをしてしまった。
また大変な介護も、自分で頑張りすぎたのでは
ないでしょうか。
お子さんにも恵まれたとありますが、
お子さんは、父親の介護にはどれくらい関わっていたのでしょう。
また専門家の手助けはどれほどあったのでしょうか。
罪をおかした妻の、介護の負担がもう少し軽ければ、
こうした事件は起こっていなかったのかもしれません。
自分は大丈夫と思っていても、
実は相当しんどい思いをして、
すこしの刺激で爆発してしまう状態なのかもしれません。
介護は毎日のこと。
周囲の人は、
中心になって頑張っている人の負担をできるだけ軽くし、
精神面でのケアを考えてあげる必要があるなと感じました。
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