昔、アメリカを旅行した時、
現地のスーパーマーケットに寄りました。
その牛乳売場で見かけたもの。
それは、子どもたちの顔が
印刷された牛乳パックでした。
いなくなった子どもたちの
情報提供をよびかける広告でした。
アメリカ国内では、毎年多くの子どもが、
誘拐などで行方不明になっていると知り、
本当に驚いたおぼえがあります。
そのことを久しぶりに思い出したのは、
2015年8月22日の午後10:00~午後10:50に
NHKで放送された
《NEXTスペシャル▽愛しい我が子が誘拐された~中国“行方不明児20万人”の衝撃》
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/3356/2098011/index.html
を見たからです。
「NEXT未来のために」
http://www4.nhk.or.jp/next-mirai/
NEXTスペシャル▽愛しい我が子が誘拐された~中国“行方不明児20万人”の衝撃
http://www4.nhk.or.jp/next-mirai/x/2015-08-22/21/6669/2098011/
この番組はタイトルにあるように、年間に行方不明の子どもが
20万人に及ぶとされる中国の実態に迫ったドキュメンタリーです。
番組の主要な要素となっていたのが、子どもを誘拐された親たちが、
子どもの顔写真を車体一面に描いたワゴンで、我が子を探すキャラバン。
もう何年も探し続けている人もいれば、
半年前に行方不明になった
我が子を探している親もいます。
警察など公の組織には頼り切れないので、
誘拐された親たちは組織を結成し、
インターネットにサイトを作って、
情報を集め、子どもを自らの力で
探そうと試みているのです。
半年ほど前に男の子を誘拐された父親。
地方から都会に出稼ぎにきて、暮らせるめどがついたので、
母子を呼び寄せて、すぐに子どもをさらわれました。
母親が目を離したわずか30分の間に、
いなくなったようです。
家の近くの池の周囲でいなくなったので、
池の水をぬいて、底の泥をさらいもして、
必至に探したものの、見つからなかったそう。
他にも我が子をさらわれた親たちが出てくるのですが、
その多くは、上にあげた親のように地方から出稼ぎにきた、
経済的に豊かではない人たちです。
裕福な人たちは、お金を出して、安全をしっかり確保できるので、
そうした人たちの子どもをさらわれることは少ないのだとか。
ではさらわれた子どもたちはどこに?
そこに犯罪組織がからんでいるといいます。
誘拐した子どもを地方の農村に売るのです。
一人っ子政策で跡継ぎがいない農民に。
社会主義の中国といえ、社会保障も十分ではない、
地方の農村で、労働力確保、そして老後のためにと
子どもを、そうした犯罪組織から買うのでした。
警察の捜査に協力している組織の一員が
証言していましたが、男の子と女の子では、
男の子の方が値段が高く、しかしそれでも
100万ほどでした。
(100~120万円、「女の子」60~80万円)
中国の農村では、まだまだ男尊女卑の思想が残り、
跡継ぎは男性という意識があるので、
こうしたことになるようです。
こうした意識は一朝一夕には変わらないようで、
子どもを金で買うことが多いとされている地域で、
キャラバンで探している父親に向かって、
「お金を出して買った親たちが子どもを
取り上げられるのはかわいそうだ」なんて
言い放っている住民もいました。
番組を構成するもう一つの要素は、
5歳の頃、さらわれ、養父母に育てられ、
大きくなり北京に出稼ぎに出た26歳の青年が、
母親を探す姿です。
中国のテレビ番組に出演したことで、
実家の場所がわかるのですけれど、父はすでに死亡。
母は子どもを誘拐されたショックで失踪。
姉は出稼ぎに出ていました。
故郷を訪れたものの、青年は肉親に会えませんでした。
北京で暮らす男性のもとに、
母に似ているホームレスの女性がいるとの情報が。
すぐに向かいますが、人違いでした。
そしてようやく姉と連絡が付き、
勤め先から休みをもらうことができ、
実家のあった場所で、再会がかないます。
貧しさ故に、弟を探すことが出来なかったけれど、
ひとときも忘れることはなかったと泣く姉。
気にしていないとゆるす弟。
貧しい家庭から子がさらわれ、
貧しい家庭に売られていく
中国の厳しい現実が浮き彫りになります。
北京の窓のない地下の小さな部屋に住み、
懸命に働くこの青年。
乏しい稼ぎの中から、養父母に仕送りをしています。
その養母のインタビューも出てきます。
お金でこの男性を買った女性です。
その夫婦に娘はいましたが、女ではダメ、
男でなければということで、この子を買ったのでした。
現在は年を取り、糖尿病で目が見えなくなっている養母。
娘は一緒にいますが、買った息子が頼りといいます。
中国の刑法では、さらわれた息子が買った養父母を
訴えない限り、(誘拐の)犯罪にはならないのだそう。
この青年は養父母を訴えて、
罪を問う気持ちにはなれない
と言います。
養母に仕送りを続けながら、
わずかな手がかりを求めて、実母を探し続けるのでした。
キャラバンの方では、去年の12月に息子を
誘拐された父親に、ある情報が届きます。
その男性の息子に似た子どもがある魚屋にいるというのです。
キャラバンの一行はそこに向かい、
様子をうかがいますが、
その男性の息子ではありませんでした。
しかしキャラバンのリーダーは、グループの別の
親の誘拐された子どもではないかと疑います。
その親に、メールで魚屋の子どもの写真を送ります。
似ていると思った親は、そこにやってきます。
地元警察も入れて、魚屋の両親、子どもを含め、
キャラバン一行と話合いをします。
大いにもめますが、DNA鑑定をすることに。
数日後、出た結果は、探している親にとって厳しいものでした。
DNAが一致しなかったのです。
こうした懸命のキャラバン活動で、
これまで見つかったのは、わずか3件。
番組の中で、いなくなった子どもたちの
写真の看板を見た通りすがりの女性が、
語っていましたけれど、
誘拐された子どもを探し出すことは、
海の中に落ちた針を探すようなもの。
まさにそのように感じました。
アメリカの場合は、年間およそ80万人もの
子どもの行方不明者がいると言われているそう。
その多くは、離婚して別れた配偶者が、
子どもを「誘拐」するというケース。
さらに親の虐待から子どもが逃げる
という場合もあり、中国とは事情が異なるようです。
日本は、先頃、中学生2人がいなくなり、
遺体で見つかるという痛ましい事件がありました。
読売新聞が2012年度に、
0才から小学校にあがるまでの乳幼児を対象に
全国調査したところ、所在が不明だった
乳幼児は4176人だったそう。
専門家によれば、そこに小中学生の不明者を加えると、
万単位の行方不明者がいるということのよう。
この数字にもビックリさせられました。
子どもは、われわれの未来。
子どもが安心して暮らせる社会、世界を
作るのが大人の役目です。
日本も含め、まだ世界はそれを作り出せていないですね。
〇クローズアップ現代の
2015年4月21日放送
「『行方不明児20万人』の衝撃~中国 多発する誘拐~」
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3644.html
国際報道《2015年2月9日(月)
“我が子はどこに…” ~中国・横行する子どもの誘拐~》
http://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/archive/2015/02/0209.html
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