あなたは、多くの人の前で、
あがることなく挨拶が出来ますか?
初対面の人に、気負うことなく
自己紹介や雑談は出来ますか?
家族や他の人には、
そうは思われていませんが、
結構なあがり症です。
人に初めて会うときは、
ものすごく緊張しますし、
はじめての人に限らず、
余り親しくない人にどうしても
電話しなければならない時は、
朝からドキドキして、憂うつな気分。
約束の時間の前には何度も話す内容を確認したりします。
思春期真っ盛りの中学生の頃は、
お年頃ということもあり、
もっとその度合いが激しかったです。
それは自分だけでなく、
思春期の子どもの多くは同じ悩みを
持っていたのではないでしょうか。
中学二年の時の担任の先生はユニークな先生でした。
肌がよわいという理由で
学校の先生なのにもかかわらず、ひげ面(無精ひげ)。
以前にもご紹介したことがあるのですが、
「ナメブレ」なんて聞いたことがない言葉を
教えてくれた人でもありました。
あなたはおわかりでしょうか、その意味を。
本当かどうかわかりませんが、
あの暗くてじめじめしたところにいた
ナメクジがブレーキをかけるところを
ご想像下さい。
といっても、ナメクジがそうするところを、
一度も見たことがないので、
想像しようもないのですが……。
ともかくナメクジは、ゆっくり進んでいるのに、
止まろうとしてもなかなか止まらないのだそう。
つまり一端、止まろうと決断しても、
止まるのに時間がかかると。
先生は、
「決断をしたら素早く行動」
ということをわれわれに
伝えたかったのだと思います。
話がそれてしまいましたが、
そんな先生が、ホームルームで、あるとき、
どんなえらい人にあっても気圧(けお)されない、また
上がらない方法があると言って、それを教えてくれたのです。
どんな方法でしょうか。
しかも先生のオリジナルではなく、
あの明治維新の英雄の一人である
坂本龍馬が実行していた方法だというのです。
これで一気に期待が高まりました。
どんな方法なんだろうと、クラスのみんなは、
次の一言を固唾をのんで言葉を待ちました。
「簡単な方法だ。目の前の相手が
脱糞する姿を思い浮かべればいい」。
クラスがざわつきました。
「脱糞」の意味がわからない生徒もいたのか、
隣りや前後の級友に聞いている人も。
そう、その人が大をする姿を思い浮かべよと
先生は言ったのです。
排泄行為は人間のもっともみっともない姿であり、
そうした姿を相手もするのだと思えば、
自分と同じ人間で、大きな違いはないと
相手を過剰に持ち上げずにすむのだという理屈です。
大勢の前で挨拶をするときは、人数分のその姿を想像する。
舞台にたつ俳優さんなんかは、
観客をカボチャと思えというのが、
上がらないコツの一つと聞いたことがあります。
それをさらに過激にした形と言えるのでしょうか。
先生はその後、「先生(担任)のは想像したら駄目だぞ」
と付け加え、その日のホームルームは終わりました。
学校からの帰り道、同じクラスの友達と、
「あの話、役に立つのかなー」
と話し会ったのを覚えています。
この先生のアドバイスは、
実際にその後、効果があったのか?
女子にはさすがに聞いたことはないのですが、
男子の級友は、発表会、人前でのスピーチ、
そして面接の時に、思い浮かべたら、
落ち着くことができたと話してくれました。
自分の場合は、頭の中は見られないし、
相手がこのことを知っている訳はないのに、
「想像をしているだろう」と、思われるのが、
恥ずかしくて、「想像しよう」と思うだけで、
実際に想像することはできませんでした。
けれど、「最後の武器を持っているぞ」
と思えるだけで、気分を楽にできたみたいで、
以前よりは少しですが上がりにくくなりました。
その意味では先生の言葉は人生に役立ったと言えるのでしょう。
5年前に被災した男の子(青年)が、
堂々とテレビで当時のことや、
今の生活のことを語っていた映像を見て、
不意にこの話を思い出しました。
彼の場合は、想像を絶する体験が、
精神を鍛え、強くしてくれたのでしょうね。
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