朝日新聞「ひと」欄。《「君は昨日の君に勝った」と受験生を励ます塾社長》
2022年12月26日、朝日新聞「ひと」欄は、
《「君は昨日の君に勝った」と受験生を励ます塾社長 斎藤勝己(さいとう かつき)さん(58)》
個別指導塾「東京個別指導学院」の社長斎藤勝己さんを紹介しています。
曾祖父は初代三遊亭圓歌、祖父は三味線の名取りという
斎藤さんが、小さい頃から名前に込められた思いを教えられていたそう。
「勝己(かつき)」は、「己に勝つ」。
《剣術の「柳生新陰流」に伝わる「昨日の我に今日は勝つべし」》。
斎藤さんは、教育に携わり、受験生を、
《今日、君たちは解けなかった問題が解けるようになった。
昨日の自分に勝った、成長しているんだ」》と励ましているとのこと。
美空ひばりさんの座右の銘「昨日の我に今日は勝つ」
このエピソードを読んで、歌手・美空ひばりさんの座右の銘を思い出しました。
あなたは、ご存じですか。
「昨日の我に今日は勝つ」
美空ひばりさんは、「今日の我に明日は勝つ」という曲を歌われています。
この歌は、保富康午(ほとみ こうご)さんが作詞したもの。
保富さんは、「大きな古時計」の訳詞を手がけたほか、アニメの「ドカベン」「おれは鉄兵」「一球さん」など数多くの主題歌の作詞をされています。
ひばりさんは、この「今日の我に明日は勝つ」に影響を受けて、座右の銘にしたようです。
柳生新陰流政党第二世・柳生宗厳の言葉「きのふの我に今日は勝つべし」
「昨日の我に今日は勝つ」は、上の「ひと」欄にも書かれている通り、
柳生新陰流に起因する言葉で、柳生宗厳(石舟斎)が
唱えた名言とされているようです。
「一文は無文の師、他流に勝つべきにあらず、
きのふの我に今日は勝つべし」
(柳生新陰流政党第二世・石舟斎が残した『柳生家憲』の一節)
他人より、昨日の自分に
勝つことの方が難しいのかもしれません。
この本は柳生新陰流の第22代世宗家となる柳生耕一平厳信さんが執筆した一冊。
柳生新陰流の人々が残した文献をもとに、「負けない」ための奥義が記されています。
宮本武蔵の記した「五輪書」の「水の巻」の最後の部分には、
《今日は昨日の我に勝ち、あすは下手に勝ち、後は上手に勝つと思い》
と記されています。
《絶えず心にかけ急ぐ心なくして折々手にふれては徳を覚え、
何れの人とも打あひ、其心を知て千里の道も一足づゝはこぶなり、
ゆるゝゝと思ひ此の法を行ふ事武士の役なりと心得て、
今日は昨日の我に勝ち、あすは下手に勝ち、後は上手に勝つと思ひ、
此書物のごとくにして少も脇の道へ心のゆかざるやうに思うべし》
自分だけに留まらず、他人を負かすという点が少し違いますが、
「昨日の我に今日は勝つ」との趣旨を述べています。
全体では、千里の道も一歩からと言われるように、
一歩一歩、絶えず努力する大切さを説いているようです。
宮本武蔵と柳生新陰流
こうして見ると、何かを極めようとする人の意識というものには共通したものがあるようです。
宮本武蔵は、1584年~1645年6月13日。柳生宗厳は、1529年~1606年5月25日。
柳生宗厳は、宮本武蔵のかなり前に活躍しています。
柳生新陰流はもちろんその後も連綿と続いており、その歴史の中で、
武蔵から影響を受けているようです。
《幻の史料『刀法録』で明らかになった柳生の剣に伝わる宮本武蔵の極意!
吉川英治の小説をはじめ時代劇、漫画等でもおなじみの剣豪・宮本武蔵。
かたや徳川家の御家流である柳生新陰流一門。物語の中では往々にして
ライバルとして描かれる両者ですが、実は武蔵と柳生の技術、極意には
多くの似た点があることが以前から研究者の間で指摘されてきました。
そして著者らが所属する名古屋春風館には壮年期の武蔵の円明流と
尾張の柳生新陰流が伝えられています。本書は実際の技の比較と、
この道場が所蔵している未公開の柳生文書『刀法録』を通じ、
武蔵と柳生の思想と技における密接な関係を明らかにするものです。
歴史、剣豪小説ファン、武術の実践者必見の極意の世界。》
https://shinsho.shueisha.co.jp/kikan/0640-h/
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