- 共通テストの世界史Bで誤植、「科挙」を「科拳」と誤る
- 挙を拳になぜ間違った。ミスの原因は。
- 誤字脱字、変換ミスをどのように防ぐか、なくすか (校正)
- 内容のミスをどうなくすか 校閲 事実確認
- 「天皇陛下」「陛下」。間違いを防ぐために一つの活字に。
- 「グーテンベルク聖書」、「姦淫聖書」。
- 校正、校閲に光があたる ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」
NHK「プロフェッショナル」で「校正者・大西寿男」、 - 文章作成支援ツール「文賢」 私が使っている校正支援ツール、機能
- 日本校正者クラブ 校正に役立つ書籍、サイトなどの情報
- 確認作業、午前中の太陽光が一番。照明、メガネ、ルーペ。
- 中国の官吏登用試験「科挙」 カンニングのためのグッズ、宮崎市定の名著
- 破天荒、圧巻は科挙用語
共通テストの世界史Bで誤植、「科挙」を「科拳」と誤る
2023年1月14日に行われた大学入学共通テストの世界史Bで誤植がありました。
中国の官吏登用試験「科挙」。これを「科拳」と誤って印刷されたとのことです。
あなたは、違いがわかりましたか。
正しい方は、後ろの漢字が「挙」。挙手(きょしゅ)、挙(あ)げる。
後ろの間違った方は、「拳」、拳闘(けんとう、ボクシングのこと)、拳(こぶし)
です。
老眼が入っているので、はじめ、このニュースをパソコン画面上で見たとき、
違いがわかりませんでした。
共通テストの場合、一般的な個々の大学の入試に比べ、問題作成にあたっては、
より多くのスタッフが関わり、誤字脱字、また内容の誤りがないか校正・校閲を
しっかり行っていると思うのですが、それでもやっぱりこうしたミスは
起こってしまうのですね。
挙を拳になぜ間違った。ミスの原因は。
このニュースを読んで、疑問に思ったのは、当初、問題を作成した人が
どのような方法で、原稿にしたかという点です。
おそらく手書きではなく、パソコンで作成したのだと思うのですが、
その際、世界史の専門家ならば、「科挙」とする場合、
おそらく「かきょ」と打ち、変換ボタンを押し、選択候補の中から選ぶ。
そして「科挙」を選択して決定。そんな経緯だと思うのですが。
ちなみに自分が使っているFEPのATOKで「かきょ」を入力し、変換すると、
科挙、家居、河渠の3つの言葉が出てきます。そこに「拳」が入る余地はありません。
MicrosoftIMEでかきょを入れると、科挙、家居。Google日本語入力では、
上の3つに加え、火炬、寡居、蝸居、過居と漢字二文字は全部で7つ出てきますね。
いずれにしても「拳」は出てきません。
どこで「拳」が入ってきたのかなー。
今はおそらくすべてデジタル化されて、問題作成グループ、印刷グループの間でも、
デジタルデータでやりとりしていると考えられます。誰かが、一字ずつ入れ直した。
その際に、「挙」を「拳」と間違えたのか。
どうもよくわかりません。
誤字脱字、変換ミスをどのように防ぐか、なくすか (校正)
入試だけでなく、ビジネスの場において、文書、メール作成で、書く機会は以前に比べて、
格段に増えました。そのときにこうした間違いは許されませんね。
契約の場合だと、誤字脱字にくわえ、固有名詞、数字、日付のミスが致命傷になる場合も。
間違い、ミスを減らすためにはどうしたら良いのでしょうか。
長年携わった放送業界、特にニュース現場では、先輩から様々なことを教わりました。
また集団でミスを減らす取り組みをしています。
- 書いた本人 時間を置いて見直してみる 場所を変える
書いてすぐに見直すと、思い込みで間違いをそのまま見過ごしてしまうことが。
時間を置くと、「他人」の目になることが出来、間違いに気付きやすい。
見直す対象をその度ごとに変える。
1度目は固有名詞(人名、会社名、商品名、地名)、
2度目は、数字と言った具合に。
また次の項目にも関係するが、場所を変えてみるのも良い。 - 書いた本人 見る手段を変えてみる。大きなモニター、印刷する
大事な書類作成をスマートフォンでする人は多くないと思いますが、
下書きをする場合も。そうした初期の間違いがそのまま引き継がれる傾向も。
なので書いたら、見る手段を変えてみる。
スマートフォン→タブレット→ノートパソコン→外付けモニターといった具合です。
但し、高画質になったとはいえ、パソコンの画面より、紙の画面の方が
はるかに見やすいです。
なので、紙に印刷して、それでチェックすると間違いを見つけやすいです。
日本語的な間違いは、ATOK、Wordなどで間違いを指摘してくれますので、
それでかなり防げますね。(誤字脱字、表記の揺れなど) - 書いた本人 音読する。もしくはWordなどの読み上げ機能を使う。
パソコン画面にしろ、紙にしろ、目だけで黙読するより、
音読してみると、音から間違いに気付くことも。
またWord、一太郎などのソフトでは読み上げ機能がついていて、
書いたファイルの文章を読み上げてくれます。それを聞いてみる。 - 同僚、上司など他人に見せて読んでもらう
他人の目で読むと間違いを見つけやすいですね
より客観的な立場から文章、原稿に向かうと、ミスに気付きやすい。
一人よりも二人。さらに三人。しかし余り多いと、「自分以外の多くの人が
大丈夫と言っているのだからOKだろう」と逆に安心してしまい、ミスを見逃しがち。 - ミスの記録を残しておく 本人、部署で共有する、マニュアル作り
「ミスは繰り返す」「躓きやすいところは決まっている」「失敗は偉大な教師」。
同じ間違いを繰り返すことはよくあります。また人は同じ所で失敗しがち。
失敗、ミスは、貴重な経験として、次に記録しておきましょう。
また個人だけでなく、部署、会社で共有することも大切。大きなミスを防げます。
「よくある質問と答え」ではないですが、「よくある契約書、メールの間違い」といった
マニュアルを作っておくと、新人、アルバイトなどが入ったときに、ミスを減らせます。
マニュアルはその都度、改訂すること。
内容のミスをどうなくすか 校閲 事実確認
ミスを探すという場合、大きく校正と校閲があります。
校正は、文字や文章が日本語として問題がないかを確認すること。
校閲は、書かれた内容そのものが正しいかどうかの事実確認です。
校正は、「沖縄返還」を「沖縄変換」とミスした場合に見つけて正す。
校閲は、「沖縄返還は1973年に行われました」とある場合、
その記述が事実として正しいのかどうかを検証します。
ちなみに沖縄返還は1972年(昭和47年)です。なおこうして西暦と元号を
併記する場合、二つの間に食い違いがある場合があるのでそれもチェックします。
文書に書かれている事実を一つ一つ確認していく。大変な作業ですが、
地道に一つ一つやっていくしかありません。
昔は、書籍、雑誌、新聞、電話での本人、関係者などへの取材など、
アナログで大変でしたが、様々な媒体が電子化され、インターネット上に
公開されていることが多くなったので、かなり楽になりました。
しかし、インターネットはすべてではありません。昔ながらの地道な
取材、調査が必要になることも少なからずあります。
「天皇陛下」「陛下」。間違いを防ぐために一つの活字に。
今回の科挙の漢字ミスは、たしかに間違いですが、解答にあたって大きな影響を
与えるような間違いではなかったと考えます。
しかし、誤植が罪に問われたり、命を奪われるような事態になることも。
よく言われるのは、戦前の「天皇陛下」にまつわる逸話。
戦前の日本では、皇室に対する不敬罪がありました。
「天皇陛下」の「陛下」を「階下」と誤植して出版禁止の
行政罰をうけた出版社もあったようです。
昔の活版印刷では、手書きの原稿を見て、活字を一つずつ拾い、
印刷用の版を作る植字工という職業がありました。
その植字工が活字を拾い間違えると、誤植が起こります。
上の例では「陛」と「階」を間違えてしまったのですね。
このため、出版社、新聞社の中には、「陛下」の2字、
「天皇陛下」の4字を一つにした活字を作るなどして、
間違いを防止したそうです。
「グーテンベルク聖書」、「姦淫聖書」。
世界一のベストセラーと呼ばれる聖書。教徒にとってはとても重要な存在で、間違いは許されません。活版印刷を発明したグーテンベルク。活版印刷の技術を使って「聖書」が印刷され、これが多くの
人たちが聖書に触れる機会を作り、キリスト教の普及に大きな影響を与えました。
なおこの時に印刷された聖書は、グーテンベルク聖書と呼ばれ、印刷されたのは200部足らず。
現存しているものは50部足らずで、とても貴重なものとされています。
日本では完本を慶應義塾大学が保管しています。
《グーテンベルク42行聖書 マインツ 1455年頃 紙》
誤植は、活版印刷の発明から始まったと言っても良いかもしれません。
聖書で有名な誤植は、1631年、ロンドンで印刷された、
いわゆる姦淫聖書と呼ばれるものです。「脱字」が大問題になったのですね。
《出エジプト記》のモーセの十誡(かい)中,第七誡〈なんじ,姦淫するなかれ〉の
https://kotobank.jp/word/%E5%A7%A6%E6%B7%AB%E8%81%96%E6%9B%B8-1294770
なかれnotが脱字し,〈なんじ,姦淫せよ〉となり,印刷者は罰せられ,
その聖書は全部焼捨てを命ぜられたという。
姦淫聖書を出版したのは、出版業者のロバート・バーカーとマーティン・ルーカス。
国王チャールズ1世は激怒。国王直轄の法廷星室庁で裁かれ、2人は出版業免許を剥奪された上、
300ポンドの罰金が課されました。
当然ながら、200部ほど印刷された姦淫聖書は回収され破棄、焚書されました。
しかし、それを免れたものがおよそ20冊ほど現存していると言われています。
ニューヨークの公共図書館、大英博物館などが所蔵。オークションに出品されたことも。
こうしたミスのある印刷物を集めているコレクターは多く、高価な落札価格がついたようです。
校正、校閲に光があたる ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」
NHK「プロフェッショナル」で「校正者・大西寿男」、
最近、こうした校正、校閲をする人に光が当たっています。少し前になりますが、
漫画「校閲ガール」は、テレビドラマ化されました。
《地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子》
ちょっと極端なシチュエーションもありましたが、なかなか興味ひかれる
エンターテインメントになっていましたね。
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、2023年1月13日に放送されたのが、
《縁の下の幸福論 〜校正者・大西寿男〜》。
先輩や友人の作家から、大西さんや新潮社の校閲の実力、指摘の鋭さなどを聞いていました。
友人は、「今では校閲なしに、自分の本を出せない」なんて話していました。
放送は、その言葉を納得させてくれる仕事ぶりを捉えていましたね。
校閲の方のエッセイもここしばらくの間に、いくつか出版されました。
個人的に興味をひいたのは、牟田郁子さんの「文に当たる」。
《読書好日》書評《「文にあたる」書評 職業としての校正 本のために》
ドラマでも描かれていましたが、一つの事実を確かめるために、
図書館や時には現地に行くなどの調査をして4日間もかけたなんてことも。
本、文章を愛していないと出来ない仕事だなとつくづく思いました。
毎日新聞は、「毎日ことば」で校閲の方が「ことば」や校閲の仕事について、
書かれています。とても興味深いです。
https://mainichi-kotoba.jp/
個人的には、牟田さんも出席されているこの座談会の記事がためになりました。
《「事実確認どこまで?」出版校閲者の方々に聞く》
毎日新聞校閲記者が出した以下の本の内容です。
《「校閲記者の目―あらゆるミスを見逃さないプロの技術」(毎日新聞出版)の内容》
文章作成支援ツール「文賢」 私が使っている校正支援ツール、機能
自分は校閲、校正は、ATOK、一太郎(そしてWord)の校正機能くらいしか使っていません。
文書校正機能を使いたい
https://support.justsystems.com/faq/1032/app/servlet/qadoc?QID=039054
《文章校正支援ツールJust Right!7 Pro》
https://www.justsystems.com/jp/products/justright/
取引先の中には、ほかの文章作成支援ツールを使っているところも。
その一つが「文賢」と呼ばれるもの。
https://rider-store.jp/bun-ken/
有料ですが、文章作成がかなり楽になり、ミスも減ったとのことです。
日本校正者クラブ 校正に役立つ書籍、サイトなどの情報
日本校正者クラブという組織があります。
《日本エディタースクールの実施する校正技能検定中級(旧四級)以上の有志による親睦団体》です。
そこが校正に役立つ書籍、サイトなどの情報を提供しています。
《校正に役立つ書籍》
私は、放送関係なので、ATOKに、各種辞典類をインストール、
さらに
《共同通信社 記者ハンドブック辞書 第14版》
https://www.justmyshop.com/detailitem/?itemcode=9013335
《NHK 漢字表記辞書2015》
https://www.justmyshop.com/detailitem/?itemcode=9013122
などを入れています。(Google日本語入力、マイクロソフトIMEも使う)
確認作業、午前中の太陽光が一番。照明、メガネ、ルーペ。
校正の方ではなく、ある製品の色、傷などを点検する方に伺った話。そうした点検をするのに、
一番いいのは、午前中(確か10時くらい)の太陽光。太陽光の具合を一定にするため、
南向きではなく、北向きの窓がいいんだそうです。
そこまでは無理ですが、校正作業においても、光は重要。以前、弊社の事務所では、
《「日の出約30分後の太陽光」を再現した“目が疲れにくい”スタンド. バイオライト》を
使っていました。
現在は、パナソニックの「パソコンくっきり光」と「文字くっきり光」搭載の
デスクスタンドを使っています。この二つが搭載されているのは他にないようです。
https://panasonic.jp/light/products/deskstand.html
机の上の場所をとらないので、クランプタイプが自分の好みです。
〇メガネの度があっていない場合も、ミスを犯しがち。
老眼鏡も度が進みますので、定期的な点検が必要ですね。
〇眼精疲労などもミスを誘発します。温めグッズなどで目をいたわることが大事。
眼精疲労をとるマッサージ店、鍼灸院、眼科医院に通ったことも。
毎日の自宅での手入れ。より目が休まりますね。
〇年齢を重ねると、老眼鏡をかけても細かい文字が見づらくなります。
そうした時に活躍するのがルーペ。暗い所で使う場合も考え、LEDライトつきの
ものがお勧めです。自分はいつも持ち歩くバッグの中などに入れています。
(うち一つは、「一太郎プレミアム(今はプラチナ)」を購入したときのおまけ)
中国の官吏登用試験「科挙」 カンニングのためのグッズ、宮崎市定の名著
今回は、中国の官吏登用試験「科挙」の文字が間違っていたということですが、科挙制度は、
世界史の中でも難易度の高い試験制度。合格率が低く、一生掛かっても合格しないなんて事も。
一方で、高い地位を得られるため、合格は本人のみならず一族、さらにはその地方にまで、
影響を与える出来事でした。(合格者を出した家は官戸とされ、税の減免などがあった)
試験は、筆記試験が主。数多くの科目について、筆で書いていきます。小さな部屋で、長時間に
わたって、書き続けるのです。受験生の中には、布や紙に答えを書き付けた今で言うカンニング用紙を
忍ばせるなど、様々なカンニンググッズがあったと言われています。
高校の時の世界史の先生から、科挙について知りたいならこの一冊として勧められたのが、
宮崎市定の名著「科挙」。1963年発行の古い本ですが、今でもお勧めです。
破天荒、圧巻は科挙用語
破天荒という言葉があります。「大胆で豪快なことをする様子」と言った意味で使われることが
ありますが、本来は、「今までだれもしなかったような事をすること」という意味です。
科挙に由来する言葉です。
「破天荒」は宋の時代の説話集『北夢瑣言』にある故事に由来する言葉です。元々この言葉は,「誰も成し得なかったことを初めて行うこと」という意味で使われたものです。
「天荒」とは、まだ開かれていない土地,未開の地のこと。唐の時代の荊州という場所は科挙高等官吏資格試験)に合格する者が百年以上も現れないために,「天荒」と呼ばれていました。しかし、ある年,劉蛻という人物が初めて科挙に通り,ついに「天荒を破った」,つまり「破天荒」と賞されます。この故事から,「誰もできなかったことを初めて成し遂げること」という意味で「破天荒」という言葉は使われてきました。
https://www.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2011_06/series_07/series_07.html#:~:text=%E5%94%90%E3%81%AE%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%20%E8%8D%8A%E5%B7%9E,%E7%A0%B4%E5%A4%A9%E8%8D%92%E3%80%8D%E3%81%A8%E8%B3%9E%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
圧巻も科挙に由来する言葉。「書物、催し物などの中で最もすぐれた部分」を意味します。
「迫力ある、感動する部分」という意味合いで使われることがありますが、
本来の意味とはずれています。
「巻」は科挙の答案。最優秀のものを一番上に置くという慣習がありました。
この故事から出た語です。
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