2016年5月12日の東京のお天気は晴れ。
午前10時すぎ、事務所には柔らかな陽光が
差し込み、少しあけた窓からは、湿度の低い
からっとした風がそよいできました。
余りにも爽やかで気持ちが良かったので、
その場にしばし、たたずんでしまいました。
その事務所で、読んだ朝日新聞の記事に、
心が動かされる記述がありました。
《(介護 あのとき、あの言葉:下)「生きとかんば」
姿で感じた 漫画家・岡野雄一さん》
http://www.asahi.com/articles/DA3S12351848.html
2012年に出された漫画「ペコロスの母に会いに行く」は
ベストセラーとなり、2013年には、映画化、
またNHKでドラマ化もされました。
(現在、東京新聞で、月曜日に「続ペコロスの母に会いに行く」連載中)
[amazonjs asin=”B00IJ1RDOS” locale=”JP” title=”ペコロスの母に会いに行く 豪華版 Blu-ray”]
その岡野雄一さんが、お母さんの言葉について語っています。
その記事のどこに、
特に心動かされたかというと、次の部分です。
《「母はだんだん話をしなくなりました。言葉が減っていくなか、
最後の方まで口にしていたのが『良かネェ』でした。長崎弁で
『ああ、いい感じだ』というニュアンスでしょうか。
グループホームの母の部屋に2人でいると、窓から太陽の光が差し込み、
風がカーテンを揺らしながら、す~っと通り抜ける。そんなときに、
母は『良かネェ』と一言。その後、また静かに時が流れる。
会話があるわけではないけれど、本当に穏やかで豊潤な時間でした」》。
同じような情景を体験しました。
大阪に住んでいた祖母。
90歳を過ぎて入院しました。
淀川の近くの大きな病院でした。
病室からは、遠く淀川が望めました。
何度かお見舞いに行ったある日が、
まさに病室の窓から、太陽の光がさしこみ、
風がそよいでいた、いいお天気の日だったのです。
その光の中で、その時にはもう口が
聞けなくなっていた祖母の顔を見ながら、
短い時を過ごしたのです。
祖母が元気な時に語っていた、
「お天道様の有り難さ」という言葉を
思い出していたのでした。
祖母は信心深い方ではなかったのですが、
朝起きて、神棚と仏壇にお水をお供えして、
拝んだ後、外の庭木、鉢植えに水やりしていました。
水やり前に、あがったお天道様に向かって、
何事か口にしながら手を合わせていました。
「お天道様、今日もありがとうございます」と。
今日も、日が昇り一日が始まる。
当たり前の事が、実はとても有り難い。
祖母は若い頃は、そうは思っていなかったそう。
年を重ねるにつれて、毎日昇り、地上を照らしてくれる
太陽の素晴らしさに気付いたといいます。
特別、何があるわけでもない一日。
ただ太陽がもたらす光を
元気な体で受け止めるだけ。
その普通が、実は有り難いのだと。
自分はまだまだそうした心境には至っていませんが、
なんとなく祖母のそうした心持ちが、
わかってくる年代になった気がします。
太陽の光を、今日も平穏に
迎えることができる幸せに、
深く感謝し、この一日を
いとおしみながら、過ごしたい。
そう思った至福なひとときでした。
コメント