毎年、春から夏にかけて通っている取引先は、
京王線の沿線にあります。
このため、定期的に京王線を利用します。
先日、笹塚駅のホームに降りたところ、
あることに気づきました。
それはホームのベンチの向きです。
線路と垂直になっていたのです。
座ると、体は、線路ではなく、
次の駅に向くことになります。
この向きがこれまでと異なったベンチは、
京王線の他の駅や、他の電鉄、例えば
JR西日本の新大阪駅などにも導入されています。
これは酔っ払ったお客さんが、
線路に転落する事故を防止するために
取り入れたものだそう。
確かに、線路に向いていないと、
ベンチから立ち上がっても、
線路に直進しづらくなりますね。
実際、この新しい向きのベンチにしてから、
そうした転落事故は減っているとのこと。
向きだけでこんなに効果があるのですね。
これで思い出したのが、学校の机の向き。
あなたは小学校時代、教室はどんな机の配置でしたか?
先生に相対して、みんな前を向いている形では
なかったでしょうか?
実は、自分の通った小学校では、
時々、「班学習」として、4人が一つのグループとなり、
田の字形に机を並べ替え、互いに話し会いながら、
課題を解決するという試みをしていました。
机の配置が変わるだけで、気分が変わり、
自由に学習できた記憶があります。
4月21日の東京新聞、そして5月17日の読売新聞に、
東京都江戸川区立二之江中学校の机の配置についての
記事が出ていました。
こちらの中学校では、
「コの字型」あるいは「島型」で
すべての授業を受けているんですね。
それは、そちらの方が、先生はもちろん、
ほかの生徒に話しかけやすいから。
このため、分からないことがあった時など、
すぐに誰かに相談できるとのこと。
この中学校では、コの字形で授業を受け、
グループ学習の時は、机を並べ替えて、
男女四人で「島」をつくるのだそう。
例えば、一年生の英語の場合、音読はグループで。
クラスメートと一緒に声を出し合うことで、
英語の理解を深めることに役立っているといいます。
二之江中がこうした取り組みをはじめたのが2006年度。
それまでは、授業を抜け出したり、備品を壊したりなどの
荒れた生徒もいたようですが、
この机の配置を変えてから、学習意欲の向上につながり、
授業が活発になり、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の
無解答率も低くなるなど、学校全体の雰囲気もいい方に変化したとのこと。
そうした成果をまとめた本
「生徒全員の学びを保障する コの字型机配置+四人グループ学習」
がこの4月に発売されたとのことです。
明治図書の公式サイト内、
《生徒全員の学びを保障する コの字型机配置+四人グループ学習》
http://www.meijitosho.co.jp/detail/4-18-198518-9
人と人との関係は、位置関係で変化するようです。
知合いに聞いた話も位置に関わるものでした。
子どもも独立して、
久しぶりに二人きりになったご夫婦がいました。
食事は、ほとんど家のリビングキッチンで。
そこの二人の座り位置は、長年、ご主人が、
テレビに少し斜めに相対した場所。
奥さんは、キッチンに近く、シンクにも近い、
ご主人の前の席に座っていたそう。
長年そうだったので、子どもさんがいなくなっても
ずっとそのままの位置関係でご飯を召しあがっていたそうです。
あるとき、同年代の友達ご夫妻数組がやってきて、
ホームパーティーをしたとのこと。
そのときに、いつものように座ったのですが、
それでは代わり映えしないと、ゲストに言われ、
二人は別の席で、90度の角度になるように座ったとのこと。
そしたら、お客さまが来ていたこともあるのでしょうが、
それまでほとんど会話がなかったのに、夫婦の間で、
話が非常にはずんだとのこと。
それ以降、正面で相対するのではなく、
90度で横に座る、もしくは横に並んで座る
など座り位置を変えているとのこと。
この話を聞いて、そういえばと頭に浮かんだのが、
昔、雑誌の恋愛マニュアルに書かれていた内容。
親しくなりたい人とは、正面で向き合って
座ってはいけないという教えです。
まっすぐ向き合うのは、敵対を意味するのだとか。
それに比べ、90度横向き、もしくは隣に座るのは、
友好、親しみ、開放を意味し、心を開きやすいと。
これは、座る位置による人間関係を研究した
アメリカの心理学者スティンザーの名前をとって、
「スティンザー効果」と呼ばれていると。
座り位置、体の向き。
見直したいと思います。
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