テレビを見ていたら、
コマーシャルで「ほぼほぼ」
という言葉が使われていました。
この表現、近頃、よく耳にしますね。
ある取引先で、「ほぼほぼ大丈夫です」と
自分より年上の人に言われたこともあります。
「ほぼほぼ」という表現は新しいとは思うのですが、
若者だけが使う若者言葉ではないようです。
「ほぼ」は「おおかた。およそ」という意味。
「ほぼほぼ」は、それを重ねた
「畳語(じょうご)」と呼ばれるもの。
(まだ一語として定着していないという意見もあろうが)
こうした繰り返しは、意味を強調する働きがあります。
(複数、動作・状態の反復・継続といった意味合いも)
「そもそも」「おいおい」「またまた」などと同様、
「ほぼほぼ」も日本語の用法としては、
おかしなものではありません。
「ほぼほぼ」は、「おおよそ」ということをさらに強調し、
完全ではないけれども、大体そうだと言える状況を表現したい
時に使っているように思えます。
朝日新聞デジタル。
《「ほぼほぼ」、ほぼほぼ定着?新表現から見える今とは…
山本亮介2016年6月30日05時00分》
http://www.asahi.com/articles/ASJ6Y5G4BJ6YUTIL039.html
上の記事では、この「ほぼほぼ」を使う意図について、
専門家が次のように分析されています。
《国語学者の金田一秀穂・杏林大教授(63)は
「ほとんどそれに近い、という意味で使われている
のでしょう。断言の『きっと』とか『必ず』ではなく、
限りなく断言に近いけれど、ほんの少し不確定さを
残したい、という表現意図を感じる」と話す。
「『自分の気持ちをわかってくれるかな』と、相手を
すごく意識して発せられた言葉」と分析するのは、
立命館大大学院言語教育情報研究科の
東照二教授(社会言語学)。》
《「人間関係がますます希薄になる世の中で、相手と
適切な距離感を取ろうとして生み出した防具のような言葉。
あなたと衝突したくないけど、私のことをわかってもほしい。
浮かんでくるのはそんな心模様では」》
なるほど。
辞書にはまだ「ほぼほぼ」は
見出し項目としては出ていないようですが、
上の記事にあるように、三省堂国語辞典第七版では、
「ほぼ」の説明文中に
《俗に、重ねて使う。「━━完売」〕》と出ています。
時代によって、日本語は変遷していっています。
本来の意味とは違う意味で使っている言葉も多いですね。
誤用が次第に使う人が増えてくると正用となることも。
「おもむろに」は、「徐に」と書くように、
本来の意味は、ゆっくり何かをする様子を
表現する時に使います。
ところが多くの人が、この「おもむろに」を、
「急に」「突然に」「にわかに」という意味で
使っています。
もしかしたら、この記事を読んでいただいている方も
そのように使っているのでは?
「潮時(しおどき)」は、本来は「ものごとを始めたり、
終えたりするのにちょうど良い時期、チャンス」
という意味。
けれど、「ものごとの終わり、限界」
という意味で使っている人が
意外に多いのではないでしょうか。
《言葉のQ&A 2014年8月28日、文化庁国語課
「潮時」が来たら「終わり」なのか。》
http://prmagazine.bunka.go.jp/rensai/kotoba/kotoba_003.html
「姑息(こそく)」は、本来は、「根本的な解決をせず、
一時しのぎでやり過ごす」という意味ですが、この頃では、
「卑怯な」「人を陥れる」といった意味で使われることが
多いですね。
毎日、使っている日本語ですが、
ほぼほぼ完璧だと思っていても、
まだまだそれにはほど遠いのかもしれません。
〇げきを飛ばす (檄を飛ばす、「激」ではない)
本来は、多くの人の決起をうながすために、
自分の主張を広く人々に知らせること。
しかし、上の者、指導者などが、選手や部下などの
奮起を促すために、激励するという意味で使われることが多い。
〇役不足
その人の力量に比べて役が十分でないこと。
けれど、力不足=与えられた職務・役割を果たす力が
足りないことという意味で「誤用」されることが多い。
〇さわり
さわりは、音楽や物語で見所、聞き所、最も
盛り上がり、感動するところという意味。
しかし、冒頭、出だし、最初の部分
という意味で使われることが多い。
もともとは人形浄瑠璃で、義太夫節以外の流派の
曲節を取り入れた部分の意味。そこから義太夫節の
曲中で、最も聞きどころとされている叙情的な部分を
指すように。さらにそれが転じて、広く芸能の
見どころ・聞きどころ、最も印象的な部分を言うように。
音楽で最も盛り上げる部分は「 さび」というが、
「さわり」はまさにそれ。
〇うがった見方
うがったは、穿ったで、物事の本質をつく、
深く考えるという意味。ところが、
「ひねくれた」という意味として使われる
ことが多くなっている。
〇押っ取り刀
「急いで」というのが本来の意味。
ところが「おっとり」というところから、
「ゆっくり」「ゆったりと落ち着いて」
という意味合いとして使う人が多い。
急な出来事に、刀を腰にさすひまもなく、
手に持ったままの状態。つまり急な用事で、
取るものも取りあえず急いで行くことを表現する場合に使う。
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