もう一度食べたい食べ物、料理は? 「あけび」と答えた人を思い出す秋の暮。

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秋のこの季節になると、
「あけび」とその人のことを思い出します。

「あけび」は、「開け実」で、山地に生えて、秋に淡い
紫色の実を付け、売れると縦に割れます。
なかの果肉は、厚くて白く、また半透明な部分も
あり、中には多くの黒い種があります。

ふんわりとクリームを泡立てたような食感で、
とても甘く、果実ではなく、
人が手を加えたお菓子のようです。

ずいぶん前に、
「もう一度、食べて見たい食べ物・料理は何ですか」
という話になったとき、ある知合いが答えたのが、
このあけびでした。

その人は残念ながら
もう亡くなってしまったのですが、
四国の山の中の小さな村の出身。

小さい頃に、友達と山の中を走り回り、
お腹がすくと、山の恵みを口にしていたそう。

そんな中、このあけびは、特別な存在で、
秋、紫色の実を見つけると、
友達と取り合いになるほど。

口の中でとろける味わい、甘みが、
夢見ごこちにさせてくれたと言います。

大きくなって故郷を離れ、
都会で働き、暮らすようになりました。

スーパー、デパートなどで、秋のこの時期、
たまに驚く値段がついている「あけび」を
見かけたことがあるものの、それを買い求め、
味わったことはなかったそう。

手を出して、口にしたら、
昔の思い出が失われるような気がして。

ご両親も亡くなり、住んでいた家も、
地域も寂れ、人がいなくなってしまい、
長い間、故郷に帰ることもなかったと言います。

遠く故郷を離れたことで、かえって少年時代の
思い出がより大切になったのでしょうね。

もう一度食べたい食べ物。

知合いは「あけび」と答えましたが、
本当は、「故郷のあの岩陰になったあけび」
だったのかもしれません。

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この記事を書いた人
niki

35年以上にわたり、TV、ラジオ、
イベント制作に携わる。30年余
り、放送関係の専門学校講師を
勤め、企画書、台本の書き方を
教える。10年余りホテルの食に
関するHPの制作、コンサルタ
ントも、行う。新聞は小学4年生
から読み始め、多い時には13紙
を愛読。
ブログ「トクダス」
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