放送作家志望の人たちに教える企画の作り方
こんにちは。この記事は放送作家志望の人向けのものです。
30年以上放送作家をし、専門学校でも構成台本について教えている人物が書いています。
今回は、一つの新聞記事から、テレビ番組の企画を考える方法を具体例で教えます。
参考になれば幸いです。
今回の企画の種、きっかけは「チンドン屋40年」の記事
テレビ番組の企画のきっかけ、情報源
放送作家は、テレビ番組の企画を考えるのが大きな仕事。
日々、ネタ探しをし、そこから企画を考えます。
そのきっかけとなるのが、自分の体験、新聞、雑誌、Web記事などです。
企画のもとになるきっかけ、情報源については、
以下で詳しく説明していますので、ご覧下さい。
《テレビ番組の題材をどう探す?放送作家が教えるコツとポイント》
「ちんどん屋、路上で見つめた40年」。大阪のちんどん通信社の活動
今回は、紙の日本経済新聞の記事がきっかけとなりました。
日本経済新聞、2023年5月8日
《ちんどん屋、路上で見つめた40年 コロナ禍の先祈る音色 – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70771180X00C23A5CT0000/
この記事では、ちんどん通信社のリーダーである林幸治郎さんの経歴や活動内容、
チンドン屋の歴史や役割などについて紹介されています。
大学生の時にちんどん研究会を結成し、その後、ちんどん通信社を設立。
記事中、特に興味を引かれたのが、次の部分です。起源と最近の動向、
さらに大学での授業ですね。
ちんどん屋の発祥は19世紀半ばの大阪で、東京で楽隊を加えた編成が人気になったという。
(中略)
路上を練り歩く「街廻(まわ)り」の雇い主も時代で変わる。商店街や市場は活気を失い、
最近はインバウンド(訪日外国人)向けの呼び込みも増えたが、コロナで状況は一変した。一方、SNS(交流サイト)の普及は追い風で「道行く人がスマホで撮影し、拡散してくれる」。あべのハルカス(大阪市阿倍野区)のイベント会場で行う公演はユーチューブでも配信、活動の場を広げている。
4月から京都市立芸術大で週1回、授業を担当。「街を歩く僕らの仕事は地域全体の幸せを祈ること」という極意とともに、歩き方、表現方法などを学生に伝えたいという。
企画の種からいかに企画に育てるか 記事を深掘り、橫にも広げる
記事の情報を確認 さらに深掘りする (リサーチ)
企画の種からどのように企画に育てていくか。
私は上に記した箇所に引かれて、この記事を切り抜き、
企画に仕立てようと考えました。
その点も含めて、記事に書かれている情報を確認していきます。
今回は、ネタ元が新聞記事なので、情報の正確性は
かなり高いのですが、それでも念のため情報の正確さを確認します。
また新聞記事には書かれなかった情報を求め、深掘りしていきます。
この記事だと、ちんどん通信社あたりの情報からリサーチします。
最近は、ほとんどHP、SNSがありますので、それを調べます。
ちんどん通信社
https://tozaiya.co.jp/
林幸治郎さんのプロフィール
https://tozaiya.co.jp/profile02/
こちらのHPは、かなり詳しく、こちらを読むだけでも
ちんどん通信社の活動、林さんについて、豊富な情報を得られます。
林さんは、本を出しているだけでなく、
その人生がNHKでドラマ化されているんですね。
チンドン屋の歴史、また林さんの活動については、
同じ日経新聞で以下の記事があります。
《今また新鮮、チンドン屋 原点は江戸末期の大阪に
とことん調査隊 関西タイムライン 2019年11月5日 7:01》
発祥とその後の発展については、以下のように記されています。
チンドン屋の原点は1845年の大阪・千日前にさかのぼる。竹の鳴り物と売り声で人気を得た飴(あめ)売り「飴勝」が商売の傍ら、寄席の客寄せを請け負うようになった。これがチンドン屋の元祖とされる。
その後、飴勝の仕事を引き継いだ芝居好きの勇亀という人物が歌舞伎や文楽の開演の合図「東西、東西」という口上をまね、有名になった。以降、路上宣伝業全般が「東西屋」と呼ばれるようになる。
東京へ進出した東西屋が楽隊を加えた編成で注目され、売り声・口上中心だった大阪でも取り入れられるなど、姿を変えながら今の姿に近づいていく。
より広く調べる リサーチ
以上で、かなりの事実がわかってきたのですが、
それだけで、テレビ番組を作ると、それは新聞記事を
ただ単に映像化しただけとなります。
新聞記事はあくまでもきっかけに過ぎません。
自分なりの新たな情報や切り口を見つけ、
それをもとに企画することが必要です。
新聞記事以外にもさらにリサーチしてみましょう。
〇ちんどん屋とは、人目を引く仮装をし、鉦、太鼓、ラッパ、三味線などの楽器を、
ちんちんどんどんと鳴らして、口上、ビラまきで宣伝・広告をして歩く人のこと。
チンドン屋さんの起源については、上では大阪発祥と書かれていましたが、諸説あるようです。
ともかく江戸末期から明治初期にかけて、飴売、大道芸がルーツとなったようです。
〇呼び名は、「ちんどん屋」のほか、「披露目屋」「広目屋」「東西屋」などがあるよう。
〇ちんどん屋さんのコンクール
「全日本チンドンコンクール」(富山市)4月上旬
https://www.toyamashi-kankoukyoukai.jp/?tid=100050
https://www.facebook.com/chindon.toyama/?locale=ja_JP
ほかにも各地でコンクールが開催されている。
〇ちんどん屋さんの業界団体 不明
〇ちんどん屋がテーマ、出てくる映画、ドラマ、演劇、
文芸作品、エッセイ、研究者、研究本
→省略するが、この辺りの調査要素は、
Wikipediaの項目立てが参考になる。
研究書の一つ。
〇ちんどん屋に関わりがあるタレント、俳優、有名人
番組の出演者、レポーターなどテーマにふさわしい人を探す。
出演者は、ちんどん屋さん。専門家は、上のように研究している人、
本、記事を書いたことがあるライターなど。
さらにテーマを身近にするため、タレントなども。
実家がちんどん屋さん。ちんどん屋さんでアルバイトをしたことがある。
これまでイベント、テレビ番組でちんどん屋さん体験をしたことがある、
ちんどん屋を描くドラマ、映画などに出演したことがあるなど。
〇ちんどん屋さんの記念日、大会、コンクールなどの日
→「なぜ今、ちんどん屋さんを取り上げるのか」。
その説得材料として、上のような日があると、
その日に取り上げる価値、意味があると考えられる。
ずばり「ちんどん屋の日」との記念日はなさそうだが、
次のような資料が。
NHK《きょうの蔵出し映像》9月10日
https://www.nhk.or.jp/archives/jidai/special/today/0910/?date=0412
昭和29年(1954年)
チンドンヤ教室で新人養成
9/10は「野外広告の日」。“野外広告”には看板などのほか、チンドン屋も含まれるとか。
先ほどの富山市のコンクールの他、
愛知県一宮市
《全国選抜チンドン祭り》2023年5月28日
https://www.138ss.com/event/detail/4/
なおリサーチについては、次のエントリーをご覧下さい。
《テレビ番組のリサーチについて考える》
《ChatGPTとBingのAIチャットのリサーチ力を比較》
記事、リサーチをもとにテレビ番組の企画を考える
「チンドン屋」でドキュメンタリーの企画を考える 人・場所を変える コンクール
上で記しましたが、記事をもとにして、大阪のちんどん通信社、林さんの活動を
紹介するというドキュメンタリーは出来ますね。ただそれだけでは、記事の映像化。
オリジナリティがありません。
他にも考えましょう。
- 1,タイトル:チンドン屋の魂〜街に響く音楽と笑顔〜
- 取り上げる人物:東京チンドン倶楽部のメンバーと、彼らが宣伝する店舗やイベントの関係者
- 内容:チンドン屋の伝統と革新を追求する東京チンドン倶楽部の活動を追う。
彼らがどのようにしてオリジナルの楽曲や衣装を作り、どのようにして依頼者の
ニーズに応えるかを紹介する。また、彼らが宣伝する店舗やイベントの関係者に
インタビューし、チンドン屋の効果や印象について聞く。
さらに、チンドン屋の歴史や文化、現状や課題についても触れる。
- 2,タイトル:チンドン屋の挑戦〜全日本チンドンコンクールへの道〜
- 取り上げる人物:大会に出場するチンドン屋リーダーと、チームのメンバー
- 内容:全日本チンドンコンクールに出場するチンドン屋リーダーとそのチームの
準備と本番を密着取材。彼らがどのようにして技やアイデアを磨き、
どのようにして仲間と協力し合うかを紹介。
富山市で開催されるコンクールの歴史や意義、他地域から参加する
チームとの交流や競争についても触れる。
- 3,タイトル:チンドン屋の未来〜若き後継者たち〜
- 取り上げる人物:ちんどん通信社に所属する若手チンドン屋
- 内容:大阪ちんどん通信社は、日本最大規模のチンドン屋グループ。
若手チンドン屋が多く在籍している。彼らがどのようにしてチンドン屋になったか、
どのように仕事をし、自分たちのスタイルを確立するかを紹介する。
(林さんを含む)先輩からの指導。また、彼らが抱える夢や悩み、
チンドン屋として生きることの喜びや苦労についても聞く。
1は、東京チンドン倶楽部に取材対象を設定。あくまでも玉(人物)次第ですが、
東京ローカルの番組の場合は、地域に密着した方が題材としてふさわしいと判断されやすいです。
2は、目標・課題達成、競争型とも呼べるもの。大会、コンクールを軸にするものです。
大会での結果発表をハイライトに、それまでの努力、大会の舞台裏、出場者の日常などを描く
番組は一種の定番、鉄板フォーマットですね。
3は、記事の林さんに焦点をあてるのではなく、若手にフォーカスし、彼、彼女の
成長する姿をみせるというスタイルです。これもよくあるパターンです。若手との
関わりの中で、先輩、またベテランである林さんの姿も見せられ、言葉も伝えられます。
「チンドン屋」でバラエティ番組を企画してみる
情報バラエティ、バラエティを考えてみましょう。
- 1,タイトル:チンドン屋になりたい!〜芸能人が挑むチンドン体験〜
- 取り上げる人物:チンドン屋に興味がある芸能人と、彼らを指導するプロのチンドン屋
- 内容:チンドン屋に興味がある芸能人が、プロのチンドン屋からチンドンの基礎を学び、
実際に街頭で宣伝するという企画。芸能人は、チンドン屋の衣装や楽器、演奏や
パフォーマンスなどに挑戦し、その様子をカメラが追う。また、プロのチンドン屋から
チンドン屋の魅力やコツ、苦労などを聞く。最後に、芸能人が宣伝する店舗や
イベントの関係者や通行人の反応を紹介する。
- 2,タイトル:チンドン屋の秘密〜知られざる裏側に迫る〜
- 取り上げる人物:全国各地のチンドン屋 (芸能人のレポーター)
- 内容:チンドン屋の仕事や生活に密着するという企画。チンドン屋は、どのように
依頼を受けるのか、衣装や楽器はどんなものなのか、どのようにして演奏や
パフォーマンスを考えるのかなどを紹介する。また、チンドン屋が直面する困難や危険、
競争や協力なども明らかにする。さらに、チンドン屋が持つ夢や目標、情熱や信念なども聞く。
芸能人のレポーターをたてる。
- 3,タイトル:チンドン屋バトル〜全国対抗クイズ大会〜
- 取り上げる人物:全国各地のチンドン屋と、彼らを応援するタレント
- 内容:全国各地のチンドン屋がクイズで対決するという企画。クイズは、チンドン屋に
関する知識や雑学、演奏やパフォーマンスなどをテーマにしたもの。各地域から
選ばれたチームが参加し、タレントが応援役として加わる。勝ち残ったチームは、
最終決戦で賞金や賞品をかけて戦う。
- 4,タイトル:チンドン屋の夢〜街に笑顔と感動を届ける〜
- 取り上げる人物:夢見るチンドン屋と、彼が出会う街の人々
- 内容:夢見るチンドン屋が、街の人々に笑顔と感動を届けるという企画。
夢見るチンドン屋は、自分の演奏やパフォーマンスで人々を幸せにしたい
という思いを持っている。そこで、彼は街で出会う人々の悩みや願いを聞き、
それに合わせたオリジナルの曲や演出を考えて披露する。
彼の音楽や芸能は、人々の心を響かせることができるのか?
- 5,タイトル:チンドン屋の恋愛応援隊!プロポーズ大作戦!〜
- 取り上げる人物:チンドン屋と、プロポーズしたい人
- 内容:プロポーズしたい男性が事前に番組に応募し、チンドン屋に依頼します。
チンドン屋は男性の恋愛事情やプロポーズのシチュエーションを聞き、
オリジナルの演出や音楽を考えます。そして、男性が彼女とデートする日に、
チンドン屋がサプライズで現れて、プロポーズを盛り上げます。
1は、体験物。様々な職業に芸能人がチャレンジするというものです。芸能人が
体験することで、その職業の実態を描くものですが、ドキュメンタリーで描くよりも、
芸能人を使うことで、親しみやすさ、柔らかさなどがでます。芸能人=視聴者。彼と
教える側の対比で、教える側の技能のすごさがわかります。
2は、業界裏側物。密着物。ドキュメンタリーとしても描けますが、情報バラエティとしても可能。
バラエティ寄りにするため、芸能人のレポーターをたて、そこからチンドン屋さんの秘密を明かす
という構成にすると、バラエティらしくなりますね。
3,バトル、クイズというおなじみのファーマット、構造を利用した企画です。
こうした構造を利用した企画の立て方は、よくやる手ですが、すぐに思いつくものなので、
独自の工夫、切り口がもとめられます。
4,応援企画。5は、プロポーズに特化した企画。一般視聴者の疑問、悩み、ニーズに応える
というのは、テレビ番組の一つの役割で、こうした手法はよく使われます。チンドン屋さんは、
宣伝、広告をする人ですが、それは、店、場所、イベントなどの盛り上げ役であり、応援者でも
あります。応援企画にふさわしい職業かもしれませんね。
(実際にも、チンドン屋さんは、こうした活動を実施している)
ほかにも1の芸能人を子どもにすれば、教育番組、子ども番組にも。
子どもたちがチンドン屋に入門。ちんどん通信社のメンバーが子どもたちに
チンドン屋の歴史や文化、楽器や衣装、音楽や口上などをわかりやすく説明。
子どもたちがそれを受け、実際にチンドン屋を体験する様子を紹介。
「チンドン屋」からトーク番組を企画する
トーク番組を考えてみましょう。
(トーク番組はバラエティ番組の一つとして、トークバラエティと呼ばれることもある)
- 1,タイトル: 「音楽玉手箱~チンドン屋篇~」
- トーク番組の設定: 音楽に関係する様々な職業の人たちに、
自身の音楽について語ってもらう番組。今回は、チンドン屋篇
音楽とともに、チンドン屋の歴史や文化、衣装などについも紹介。 - 構造:
- オープニング: チンドン屋の演奏とともに番組の紹介と出演者の挨拶。
- 本編: 聞き手とゲストがスタジオでトーク。VTRでチンドン屋の現場や過去の映像などを挿入。
- エンディング: チンドン屋の演奏とともに番組の感想と次回予告。
- 聞き手: チンドン屋に興味がある芸能人や音楽家など。
- ゲスト: チンドン屋の代表的な個人。例えば、東京チンドン倶楽部、ちんどん通信社など。
- 2,タイトル: 「業界の秘密~チンドントーク~」
- トーク番組の設定: 様々な業界の知られざる秘密、常識をトークする番組。
今回はチンドン屋篇。チンドン屋の裏話やあるあるエピソード、
技術やコツなどをトークし、実演する。 - 構造:
- オープニング: チンドン屋の演奏とともに番組の紹介と出演者の自己紹介。
- 本編: 出演者が円卓でトーク。いくつテーマを用意。箱から取り出したテーマで話す。
- エンディング: チンドン屋の演奏とともに番組の締めくくりと次回予告。
- 聞き手: なし。出演者同士でトークを進める。
- ゲスト: 全国のチンドン屋。若手からベテラン。オーソドックスからニューウェイブまで。
1は、音楽という大きなくくりの中の一つとして、チンドン屋をゲストとして考える
という設定です。
2は、それぞれの業界のことを多数の業界人が語り合うというものです。
ここでは、聞き手はなしにしましたが、素人で侵攻は難しいので、それでも
番組が侵攻できるように、「天の声」といった進行役を置いたり、
しっかりとMCをおくやり方もできます。
トークの場合、聞き手を誰にするのかが大きな要素です。
単独で聞くのか、それとも複数で聞くのかという問題もあります。
そして、次は、話を聞かれるゲスト。
トーク番組はほかのジャンルにもまして、
「人物ありき」の要素が強いので、
誰を選ぶのかが大きな要素となります。
またゲストは一人なのか、二人なのか、それ以上なのか
という問題も。
さらに、質問をどうするのか。
その都度、相手にあわせた質問にするのか、
それとも毎回聞く、定番の質問をいれるのかという要素も。
スタジオのトーク、実演などだけで、紹介、活動、
ゲストの友人、家族、師匠などの事前取材VTRを入れるのか。
そうした様々な要素を考えて、企画を作っていきます。
なおトーク番組の作り方については、以下の記事も参考にどうぞ。
《BingのAIにトーク番組の企画書、台本を書かせた》
まとめ 記事などから企画を考えるクセを
以上、チンドン屋に関する日経新聞の記事から、
テレビ番組の企画を考えてみました。
日頃からアンテナをたて、ネタ、題材を集め、
その中からこれはというものがあれば、
リサーチし、企画案を考えてみましょう。
数をこなすことで、慣れて企画力がつくようになります。
コメント