テレビ番組が出来上がるまでを知る

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企画の種の育て方

この記事はテレビ番組作りを知りたい人のためのものです

この記事は、30年以上、テレビ・ラジオ番組制作に関わり、
放送関係の専門学校の講師を務めている人物が書いています。
この記事は、テレビ番組の制作を知りたい人のためのものです。

テレビ番組作りの過程を知る意味

どんな仕事もそうですが、仕事の全体像を知ることは大切です。
全体像を知ることで、今、自分がその中のどこにいるかわかるからです。
位置がわかると、その位置で最適な作業をすることが可能になります。
テレビ番組が企画されてから放送されるまでの流れを見ていきましょう。

テレビ番組の制作過程とそこに関わる人々

テレビ番組の制作過程を見ていきましょう。もちろんすべての番組が、
以下に書くようなプロセスをたどる訳ではありません。
番組の内容、放送形態により異なります。

テレビ番組が出来るまで

企画募集

 局内または外部製作会社に企画を募集。
 この際、全く条件がない場合もあるが、
 企画内容・ジャンル・枠(情報バラエティー、クイズ、人物ドキュメントなど)、
 放送時間(45分、1時間とか)、放送日時・枠(2020年10月10日午前10時)
 製作予算(1本1000万円)などの条件を提示することも。(こちらが多い)

 例:番組制作会社向け
   NHK、《番組企画募集
       NHKは、国内の番組制作プロダクションから企画提案を募り、
       番組制作を直接委託するシステムを取り入れています。
》 
   テレビ東京、《番組企画の募集について

   TBS 《TBSテレビ 企業情報 番組制作会社の皆様へ
   他局、動画サイトなどで募集していることも。
   過去の募集事例 (すでに終了している。念のため)
   AbemaTV「”REIWAbema Project”(令和ベマ プロジェクト)」
   https://reiwabema-pjt.abema.tv/
   Netflixは、個人や制作会社の企画持ち込みを認めていない。
   《Netflixにアイデアを売り込む方法
   
   上記3つは、番組制作会社が対象だが、
   一般個人も含め一般公募を行う場合もある。
   2022年の例だが、Huluの《HU35クリエイターズ・チャレンジ
   35歳以下の映像作家発掘プロジェクト。企画、脚本を映像化するプロジェクト。

   また制作会社などから、個人に番組のアイデアを募集していることもある。
   クラウドワークス、
   《テレビ番組の企画アイデア募集【1行からOK】
    【あなたが観てみたい新しい番組!くだらないこと大歓迎】

企画会議(制作会社内、局内)

 こうした企画募集を受け、制作会社では、提出用の企画会議を実施。
 会議での話し合いをもとに、企画書を作る。
 (放送作家、ディレクター、その際、必要なデータ、情報のリサーチを
 リサーチ会社に依頼することも)
 会議出席者は、複数の企画書を提出。
 プレゼン(プレゼンテーション)を行い、
 提出する企画を選定する。

 会議中、ホワイトボードに会議のポイントを筆記したり、
 会議後、会議録を作成。多くはADの役割。発言者の発言の
 ポイントをしっかりと記録する。デジタル化してメールなどで
 出席者に送付。
 議事録には、会議名、日時、場所、参加者、
 議題(テーマ)、出席者の意見、決定事項、課題、
 今後の動き(誰が何をいつまでに行うのか)、
 次回会議のテーマ、日時などを記す。

 その際、出席者など、多くの人のアイデア、
 意見を元に、企画を練り直す。

 放送作家。ディレクターがまとめて、提出する企画書を作成する。

企画採択会議

 放送局(編成、制作など)が、応募された企画書を見て、採否を判断。
 企画書だけで判断する場合もあるが、候補を絞った上で、残った企画を
 提出した制作会社が、放送局に出向き、プレゼンし、最終決定をする場合もある。

 ここで企画採用(特番・単発・シリーズの場合、レギュラー番組の場合)
 されたら、次の段階に。
 
企画会議 (局・制作会社)

 局の編成、制作などと、制作会社が企画会議を行う。
 局、スポンサーの意向で修正を求められることも多い。
 番組のコンセプト、概要、レギュラー出演者、
 構成、コーナー案など、番組の大きな方向性を決める。

制作会議

 企画会議での決定をもとに、制作会社プロデューサー、ディレクター、
 構成作家が具体的な内容を話し会う。

 番組によっては、リサーチャー、海外コーディネーター、
 美術、技術部門のスタッフが参加する場合もある。

 局の編成、営業、制作担当者も集まり、制作スケジュール、
 具体的な企画内容、出演者、ロケ場所を固めていく。

 この会議で決まったことをもとに、構成作家(放送作家)は、
 構成表、台本を作成
 まず構成表を作成し、主にディレクターとの間でやりとりし、
 ある程度固まった段階で、台本を作成。
 プロデューサー(制作会社、局)、出演者にチェックしてもらい、
 最終的な決定稿を作成する。

構成表、台本の例。
以下は、対話型AIの一つであるBingのAIチャットが
こちらの要請に応じて出力したものです。

構成表には様々な形式がありますが、これは表形式。
左から№、映像(コーナータイトル、映像的な動き、素材を記載)、
音声(内容、音声面)、時間(ここにはコーナー時間しか書いていませんが、
2段にして、コーナー時間と番組が始まってからの経過時間を書くのが一般的です)という形です。

No.映像音声時間
1オープニングタイトルなし0:10
2MC HとIの顔出し– 番組の挨拶と今日のテーマの紹介0:20
3ドラマコーナーのタイトルなし0:10
4ドラマコーナーの映像素材– ドラマのストーリーやキャラクターを紹介するナレーション – ドラマのシーンを放送する(セリフや効果音など)10:00
5MC HとIがドラマについてコメントする映像– MC HとIがドラマの感想や見どころを話す – MC HとIがドラマに関するクイズやトリビアを出題する – 視聴者からのメールやツイートを紹介する5:00
6エンディングタイトル– MC HとIが感想や告知を交えて挨拶する0:20

このように、構成表には番組の流れや内容を分かりやすく示す情報を入れます。構成表を作る際には、番組の目的や視聴者の興味を考えて、最適な映像や音声を選ぶことが大切です。😊

この構成表は参考になりましたか?😊

こちらもBingのAIチャットによる台本です。あくまでも参考例です。

台本も様々な形式がありますが、こちらは表形式で横書き。
左から№、映像(コーナータイトル、映像の動き、素材など)、音声(音声面、内容)、
時間(コーナー時間、経過時間)と言う項目になっています。

映像音声時間
3– ドラマコーナーのタイトル(赤い文字で「愛と復讐の果て」)なし0:10
4– ジュリアとアレックスがレストランで食事をしているシーン
– ジュリアが悩む表情を見せる
– ジュリアが携帯電話を取り出す
– ジュリアが迷った後、携帯電話を切る
– ナレーション:「今日は、人気ドラマ『愛と復讐の果て』の第5話をお送りします。主人公のジュリアは、夫の不倫相手に復讐するために、夫の会社のライバルであるアレックスに近づきます。しかし、アレックスとの関係が深まるにつれて、ジュリアは次第に彼に惹かれていくのです。」
– ジュリア:「アレックス、私はあなたに感謝しています。あなたがいなかったら、私はもう生きていけなかったかもしれません。」
– アレックス:「ジュリア、私も同じです。あなたに出会ってから、私の人生は変わりました。あなたは私に本当の愛を教えてくれました。」
– ジュリア:「でも、私たちはこんな関係でいいのでしょうか?あなたは私の夫の敵なんですよ。」
– アレックス:「そんなことは関係ありません。私たちはお互いを愛しているんです。それだけで十分です。」
– ジュリア:「でも、私はまだ夫と離婚していないんです。夫には不倫相手がいると知っていますが、それでも法的にはまだ妻なんです。」
– アレックス:「それなら、早く離婚すればいいじゃないですか。私はあなたを待っています。私と一緒に新しい人生を始めましょう。」
– ジュリア:「そうしたいです。本当にそうしたいです。でも・・・」
– 効果音:携帯電話が鳴る
– ジュリア:「あれ?夫からだわ・・・」
– アレックス:「出なくていいですよ。今は私たち二人だけの時間ですから。」
– ジュリア:「でも・・・」
– アレックス:「ありがとう。あなたは私を選んでくれましたね。
2:00

番組の収録・撮影

 番組ディレクターが取材、スタジオ収録を行なう。
 ロケを行なう場合は、ロケハンを行い、ロケ取材。

 (主にADがリサーチ、取材依頼などを行なう。ロケハンの情報をもとに、
 ディレクター、放送作家がロケ台本作成。撮影後。ロケ取材素材を編集)。

 スタジオ収録。
 (リハーサル、照明、音声打ち合わせ、出演者打ち合わせ)
 出演者以外に、視聴者の反応を探るため、「観客」を入れる事も多い。
 (こうした観客を派遣する専門の「仕出し」会社がある。性別、年代など
 番組の要請に応じた観客を派遣する)
 生放送の場合は、ここで終了。

編集

 収録後、収録素材を番組の放送時間に合わせて編集。
 まず担当ディレクターが、(ノート)パソコンで
 映像編集ソフトを使い、編集を行う。(デジタルで行うノンリニア編集。
 この段階の編集をオフライン編集、仮編集と呼ぶ)
 その後、編集スタジオ(編集所)で、本格的な編集を行う。
 (オンライン編集、本編集)

 スタジオ収録部分だけでなく、観客の反応などを見て、
 スタジオ出しのVTRも再編集。

 ある程度出来たら試写を行い、プロデューサー(制作会社、局)に
 アドバイスを求め、チェックを受ける。
 何度かやりとりし、OKが出たら、完パケに仕上げていきます。

完パケ納品 (MA)

 映像編集されたVTRに、スーパーを付けたり、
 MA(マルチオーディオ)を実施。
 BGM、効果音、ナレーションを入れるなどして、
 (ナレ録り・音付け・整音作業。
 音効さん、ミキサーさんが担当する)
 放送と同様の素材に仕上げる。
 
 これを「完パケ」と呼ぶ。(NHKでは「完プロ」)

 (なお番組、Blu-rayなどの映像作品を作成するにあたり、撮影後の一連の作業を
 ポストプロダクション 、略してポスプロと呼ぶ。
 またこの作業を担当するスタジオないし制作会社を言う場合もある)
 《日本ポストプロダクション協会》《ポストプロダクションとは
 (ポスプロのフローチャートがわかりやすい)

 完パケを放送局(放送部)に納品。
 (例えば、XDCAM形式のテープ納品、ファイル納品)
 《日テレ・テクニカル・リソーシズ》 
 《WOWOW辰巳ファイリング室便り
  「そもそも”ファイリング”って何なのさ?」 2017.08.09

 放送時間、CMの時間などが
 フォーマットと合っているかどうかなどをチェック。
 
 OKであれば、放送部へ送られ、バンクに登録。
 コンピューター制御により放送される。

 《2016.02.17 フジテレビ放送部の業務例
 
 締め切りに間に合った場合は、「マスター出し」だが、
 ギリギリになった場合は、「サブ」(副調整室)出しに
 なることもある。

 ディレクター、プロデューサーは、取材などで世話になった
 一般人、機関などに放送日時の連絡を行う。
 (放送後は、礼状とともに記念品、OA素材を送付する場合も)

 最近は、番組が公式HP、Twitterなど放送以外の情報発信を
 行っている場合が多い。
 視聴者に関心を持ってもらうため、積極的に情報発信する。
 レギュラー、ゲスト出演者が自らのSNSなどを持っていることも。
 解禁日時、公開できる情報の内容に気をつけながら、情報発信する。

放送 (放送後の動き)

 放送時間に機械(サーバー)から送り出され、放送される。(送出)

 放送時間に、視聴者からの電話などに対応するため、
 番組で流した情報、質問への想定回答を用意して待機することも。
 (視聴者対応)

 放送後(放送日翌日の午前に届く)の視聴率(毎分、個人視聴率など)、
 (視聴率、現在はビデオリサーチのみ。放送局が契約しデータを受ける。
 現在は、世帯視聴率より個人視聴率が重視される傾向にある。視聴率に
 関しては、別記事で述べる)
 視聴者からの反響を、今後の放送回・企画の参考にする。

 最近は、自局の動画サイト、TVerなどでの視聴も可能。
 そこでの視聴回数、視聴者の傾向なども参考にする。

 局が独自に視聴者モニターを行っている場合もあり、
 そのモニターの意見、感想もチェックする。

 局への問い合わせ、番組HP、局のTwitterなどへの反応、反響も。
 
 SNSなどに、番組への感想、意見が書き込まれ、
 発信されていることが多いので、そうしたものも目に入れておく。

参考リンク

東放学園、《テレビドラマができるまで》
https://www.tohogakuen.ac.jp/enta/tv/
メディアボ、テレビ番組が作られるまで
https://www.homemate-research-tv-station.com/useful/12323_facil_026/
日経映像《人気番組の担い手たち》《日経スペシャル ガイアの夜明け》
1年におよぶ取材で、社会の問題を提起する「ガイアの夜明け」ディレクター 宮寺 大
(制作の流れがわかりやすく図示されています)
https://www.nikkeivi.co.jp/recruit/staff_01.html
株式会社セプテンバー、《ABOUT TV(テレビ番組ができるまで)》
https://september-9.co.jp/abouttv/
日テレ・テクニカル・リソーシズ《番組が出来るまで》
http://www.nitro.co.jp/recruit/flow.html
民放ワーク、《放送の仕組み》
https://minpo.work/works
豊橋ケーブルネットワーク、ニュース番組ができるまで
http://www.tees.ne.jp/kids/dekiru.html
メディアレシピ、《テレビ番組ができるまで
なお一般人向けではなく、青少年向けだが、各放送局は、
テレビ番組が出来上がるまで、作り方などについて、
啓蒙活動を行っている。
総務省
放送局による青少年を対象としたメディアリテラシー関連活動事例

テレビ制作会社のスタッフの仕事、働きについては、
2022年8月に出された本が参考になります。
特に、
《第2章 制作現場の日常風景(石山玲子・花野泰子)
2-1 アシスタント・ディレクター(AD)の日常
1 あやかさんのある1日
2 番組制作のやりがいと特権
3 意外に多い雑用とデスクワーク
4 職場の人間関係
5 道半ばの働き方改革
2-2 番組制作会社勤務のディレクターたち
1 若手ディレクターだいきさんのある1日
2 制作作業から得られる充実感
3 制作者としての辛さ
4 意思疎通の大切さ
5 働き方改革のしわ寄せ
2-3 プロデューサーは中間管理職
1 多忙な「営業兼マネージャー」
2 「部分業務委託」という不条理
3 後継育成の楽しみと限界
4 局系列会社は天下り先、独立系も局依存の番組制作
5 若手が育たない働き方改革、両義的なデジタル化技術。
2-4 職人として生き残るベテラン・フリー・ディレクターたち
1 仕事と趣味が両立する仕事
2 滞る若手育成
3 中間層世代の空洞化
2-5 小括:荒廃するテレビ制作現場(花野)》

NHK放送技術局による一冊。2011年と古いですが、参考になります。

《テレビ番組の制作技術 増補版
 はじめに ~番組制作技術の変遷~
第1章 番組制作の概要
 番組制作の流れ/番組制作形態/番組制作スタッフの役割/デジタルコンテンツ制作
第2章 撮影
 カメラワークの基礎/ジャンル別特徴/カメラ/レンズ
第3章 スイッチング
 スイッチングの基礎/ジャンル別特徴/映像スイッチャーシステム
第4章 映像技術
 ビデオレコーディング/バーチャルスタジオ
第5章 照明
 テレビジョン照明の基礎/照明設備/ライティングの基本/ジャンル別のライティンの応用
第6章 音声
 音声技術の基礎知識/電気回路の基礎/マイクロホン/ミクシングコンソール/録音機器/モニタースピーカー/制作技術の実際/サラウンド
第7章 ポストプロダクション
 編集技術/編集システム/映像合成技術/映像合成システム/コンピュータ・グラフィックス/音声ポストプロダクション
第8章 局外伝送
FPU伝送/通信衛星(CS)伝送 /光ファイバーネットワークを用いた伝送/公衆回線の放送利用/様々な映像伝送設備(緊急報道用機材)
第9章 デジタル時代の放送技術
デジタル放送システム/デジタル放送方式/データ放送の概要/ネット配信~「NHKオンデマンドサービス」の実例から~/「ワンセグ」の概要》
http://www.kenroku-kan.co.jp/tosho/01/index.html

プロフィール
この記事を書いた人
niki

35年以上にわたり、TV、ラジオ、
イベント制作に携わる。30年余
り、放送関係の専門学校講師を
勤め、企画書、台本の書き方を
教える。10年余りホテルの食に
関するHPの制作、コンサルタ
ントも、行う。新聞は小学4年生
から読み始め、多い時には13紙
を愛読。
ブログ「トクダス」
https://nikitoki.blog.ss-blog.jp/
ブログ「人生やり残しリスト」
https://yarinokoshi.blog.ss-blog.jp/

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