「そもそも」の意味って? 国会の安倍総理の答弁「そもそも=基本的に」は間違い、それとも正しい? どの辞書に書かれているのか?

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そもそもこんなことを問題にする
必要はあるのでしょうか?

「そもそも」をテーマにするため、
無理矢理に、上のような文章を書いてみました。

朝日新聞に以下のような見出しの記事が出ていました。

《首相答弁の「そもそも」、意味はそもそも? 国会で論戦
南彰2017年4月19日13時00分》
http://www.asahi.com/articles/ASK4M3RGSK4MUTFK008.html?iref=comtop_8_01

内容は、
安倍総理が2017年4月19日に衆議院法務委員会での答弁で
使った「そもそも」の意味についてやりとりです。

1月26日の衆議院予算委員会で、総理は、
共謀罪法案より、今回の組織的犯罪処罰法改正案の方が
適用対象を厳しくしたとして、
「今回は『そもそも』犯罪を犯すことを目的としている
集団でなければならない。これが全然違う」と。

この答弁に対して、4月19日、
民進党の山尾志桜里氏が、
「『そもそも』発言を前提とすれば、
オウム真理教はそもそもは宗教法人だから(処罰の)対象外か」
と質問したのです。

総理は、次のように答弁しました。

「山尾氏は『初めから』という理解しかない
と思っているかもしれないが、辞書で
念のために調べたら『基本的に』という意味もある」。
さらに、
「オウム真理教はある段階において一変した。
『最初から』でなければ捜査の対象にならない
という考え方そのものが大きな間違いであり、
いわば『基本的に』変わったかどうか
ということにおいて、『そもそも』
という表現を使った」と。

この総理の答弁に対し、
山尾氏は
「詭弁(きべん)を弄(ろう)して
必死にごまかしている。わかっていれば
辞書で調べる必要がない」と。

この後、朝日新聞の記事は、
『広辞苑』『日本語大辞典』『大辞林』
『日本国語大辞典』の4つの主要な
国語辞典において、「そもそも」がどのように
記述されているのかをあげ、
「基本的に」との記述はないと結んでいます。

総理がどの辞書を調べたのか、
わからないと記事にはあります。
自分も気になったので調べてみました。

明鏡国語辞典、新明解国語辞典、岩波国語辞典、
三省堂国語辞典、さらにデジタル大辞泉、

《そも‐そも【▽抑】 の意味》
《出典:デジタル大辞泉
[名]《接続詞「そもそも」が文頭に置かれるところから》
最初。発端。副詞的にも用いる。》
《[接]改めて説き起こすときに用いる語。
いったい。だいたい。さて。》
https://dictionary.goo.ne.jp/jn/131500/meaning/m0u/
大辞林
《コトバンク》《そもそも》
https://kotobank.jp/word/%E6%8A%91%E3%83%BB%E6%8A%91%E6%8A%91-315193

どの辞書にも、総理が答弁した
「基本的に」との記述はありませんでした。

Googleで「そもそも」を検索。
トップに来たのがネット辞書である、
《Weblio類語辞書》の《そもそも》

国語辞典ではなく「類語辞書」ですが、
《意義素》
《そのものの最も基本となる部分から一定の性質があるさま》
との記述があります。
http://thesaurus.weblio.jp/content/%E3%81%9D%E3%82%82%E3%81%9D%E3%82%82
さらに類語として、以下の言葉があがっています。

《根底から ・ 根本から ・ 根元から ・ 根っこから ・
基礎から ・ 基本から ・根源から ・ 骨の髄まで ・
骨の髄から ・ 土台から ・ 大元から ・ 根っから ・
根本的に ・ 根源的に ・ 基本的に ・ 心底から ・
心の底から ・ 本来的に ・本質的に ・ そもそも ・
純粋に》

「意義素」は、言語学上の言葉ですが、
その言葉に含まれる実質的な意味です。
(私見のアバウトな記述ですので注意)

自分も、「そもそも」を、
「その事柄の根本、基本から解き明かす(説く)」
といった時に使ってきましたので、
総理の「基本的に」という意味もおかしくはない
と感じています。

もちろん「そもそも」=「はじめから」
という使い方もします。

この記事で気になったのは、山尾氏の、
「詭弁を弄して必死にごまかしている。
わかっていれば辞書で調べる必要がない」
との言葉。

わかっていても、意味・用法を確認するために
辞書をひくことはあるので、この言葉は、
説得力がないというか、おかしいと思います。
総理も、《念のために調べたら》と述べていますし。

紙の辞書として市販されている国語辞書の中で、
自分が調べた限りで、「そもそも」=「基本的に」
との記述はありませんでした。

しかし上述したように、weblio類語辞書中に、
「基本」「基本から」「基本的に」の記述があります。

今回のやりとりを受けた記事ではありませんが、
調べていた中で出てきた面白いコラムがありました。

《亀和田武氏 「そもそも」を使う人は中身がないインチキ野郎
NEWSポストセブン 2015年10月22日 07時00分 (2015年10月22日 07時33分 更新》
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20151022/Postseven_355317.html

コラムニストの亀和田武氏が嫌な日本語の一つとして、
「そもそも」を挙げ、その理由について述べています。

平板なアクセントで発音される「そもそも」。

過去の「そもそも」は、
《かつて町内の御隠居が「そもそも茶の湯というものはだな」と、
物事の成り立ちを熊サンにじっくり説いて聞かせた類のもの》
でしたが、最近の「そもそも」は、そうではなく、
《ささっと何の意味も込めず、
会話の冒頭に発せられる》と。

エリック・クラプトンの発音の平板化を例に、
氏は《発音がフラットになると、固有名詞の意味自体も
ニュートラル化され、本来の意味や色合いまで変化する》と
フラット化による一般論を述べたあと、
フラット発音クラプトンは、《(別にクラプトンと
いわれても、有難がったりしてない俺様)を
アピールしているようにみえる》
と私見を披露しています。

フラット化で、《いきなり相手より優位な
マウントポジションを獲得する》のですね。
そして、《その行き着いた先が、
現在の「そもそも」現象ではないか》と。

そしてもともと「そもそも」は、
《物識りが、無学な与太郎や熊サンに講釈を垂れる、
まさに上から目線の偉そうな言葉である》と。

《会話の冒頭に早口で「そもそも」とフラットに発音》するのは、
《自分の言語スキル、ひいては思考能力に自信を持てないものが、
会話の場において、苦労しないで勝つために案出された》ものであると。

さらに「そもそも」が逆の使い方をされている例もあげます。

《物事の由来を説明する際、冒頭に置かれる「そもそも」は、
いまでは逆に説明をシャットアウトする言葉として使われる》。

次の例をあげています。
《「そもそも、あの人って、もう終わってるじゃないですか」
という具合に。俺が「そもそも」って言ったんだから、
オマエら余計なこと訊くなよ、というわけだ。》

結論は次の通り。
《「そもそも」を口にする人間には、ご用心。
中身も自信もない癖に、自分を実際よりも偉そうに見せたい
というインチキ野郎の証拠だから。》

自分も「そもそも」を使いがちな人間だと自覚しているので、
亀和田さんの指摘を十分に心に入れておきたいと思います。

最後に、自分が気になっているテレビのコーナ-があります。
その名もずばり、
テレビ朝日、《モーニングショー》《そもそも総研》
http://www.tv-asahi.co.jp/m-show/dailysegments/souken

レポーターの玉川さんは、ネットでは、
ちょっと上から目線で態度が生意気として
評判が悪いようです。

「そもそも総研」とは、物事、その問題の根本、
基本、根源にさかのぼって、説き起こし、解明していく
という趣旨だと思います。

楽しみに見ていたのですが、
最近はちょっと柔らかネタが
多いのが残念です。

〇辞書を多数お持ちの
《四次元ことばブログ》の方が、2017年4月19日
《安倍首相の辞書はどれだ! 「そもそも」を「基本的に」と書く辞書を探す旅》
http://fngsw.hatenablog.com/entry/2017/04/19/231153
とのエントリーを書かれています。

《『大辞泉』『新潮国語辞典』『角川国語辞典』『旺文社国語辞典』
『三省堂国語辞典』『岩波国語辞典』『講談社国語辞典』
『新明解国語辞典』『角川新国語辞典』『新解国語辞典』
『現代国語例解辞典』『新潮現代国語辞典』『三省堂現代新国語辞典』
『福武国語辞典』『集英社国語辞典』『学研現代新国語辞典』
『精選国語辞典』『角川必携国語辞典』『明鏡国語辞典』
『類語大辞典』『小学館日本語新辞典』『ベネッセ表現・読解国語辞典』》
さらには、過去の
《『学研国語大辞典』、『国語大辞典言泉』、『旺文社詳解国語辞典』、
『広辞林』、『角川国語大辞典』、『大言海』、『明解国語辞典』、
『辞海』、『大日本国語辞典』》《『辞苑』、『新式辞典』、
『言泉』》にあたったが、「基本的に」との記述はなく、
結局、《残念ながら現時点では安倍首相の辞書はわからない
と言うしかありません。》とされています。

追記 2017年4月30日
上記ブログで、4月23日に追記が。

《【以下、4月23日追記】
weblio類語辞書」(下記)には「そもそも」の類語として
「基本的に」があるというご指摘を多数いただいております。
ありがとうございます。私も、当記事の執筆時点で確認しております。》

この評価についてですが、
類語辞典に掲げられている「類語」はその語の「意味」と
呼べるものではない(あくまで「似た意味の言葉」にすぎない)ため、
本稿で調査した「『そもそも』を引いたら『基本的に』
という意味が書いてある辞書」にはあたらないと考えました。
ただし、安倍首相がweblio類語辞書を参照した可能性はあると思います。》
とされています。

下記の毎日新聞の記者と似た立場のようです。
(弊ブログの30日の追記ここまで)

〇ブログ《思った事をそのままに》、2017年4月19日
《そもそも=基本的は間違っているのか?》
http://blog.goo.ne.jp/koh707dr39/e/572af257c4040d54c32dca2ded4907db

この方は、
《実際、単に辞書を調べてみても「そもそも」の意味に「基本的」は無い。
だが、Weblio類語辞書を見ると》として、上にも記した記述を紹介し、
《「そもそも」という用語に「基本」という意味も含まれていることは
間違いないだろう》とされています。

また私が気になった、
山尾氏の《「詭弁(きべん)を弄(ろう)して必死にごまかしている。
わかっていれば辞書で調べる必要がない」》については、
《理解し切れていない事を調べるのは当然の事だろう。
民進党の議員達はやらないのか。まして「詭弁を弄して必死に
ごまかしている」は、単純に一人の人物を侮辱している。
何も理解せずに侮辱するは、自分が如何に痴呆であるか
晒していると思うんだが》と記述されています。

追記
2017年4月30日、
毎日新聞に次の記事が掲載されています。

《大丈夫?首相の言葉 「そもそも=基本的に」辞書になし
訂正でんでん、私は立法府の長…粗雑さ露呈》
https://mainichi.jp/articles/20170430/ddm/041/010/161000c

今回問題になっている「そもそも=基本的に」のみならず、
安倍総理の言葉遣いについて記したものです。

校閲記者である岩佐義樹さんが、
《30種類以上の辞書に当たったが、
「基本的に」とするものは見当たらなかった。》
さらに加えて、
《「新明解国語辞典」などを担当する三省堂の
吉村三恵子さんも「そんな意味はないと思う」
と首をひねる》と。

その後、岩波国語辞典7新版の
「そもそも」の語釈を引用しています。

大きく2つの意味があります。

《(1)説き起こす時に使う語
(2)元来、最初から、物事の初め・起こり》

そして民主党の山尾さんの質問・指摘を
《(1)の用法もあり、
(2)の「最初から」と読み替える》のは、
《揚げ足取りの印象も受ける》と。

それを受けたうえで、結論として、
《「基本的に、という意味もある」とする
首相答弁は解せない。本当に辞書を引いたのか》。

なお自分も書いたWeblioの類語に
関する記述に関しては、次のように記しています。

《「基本的に」を「そもそも」の類語とするものを
見たのかもしれないが、類語は「意味」ではない。》

校閲の記者らしい「厳密さ」ですが、
個人的には、「揚げ足取り」の印象がします。

そもそもの語釈として、「基本的に」と
書かれていないかもしれませんが、
その語の中に「基本的に」との内容が含まれている
のではないでしょうか?

まあこれは、安倍総理の答弁の
《「基本的に」という意味もある》を
どこまで厳格に解釈するかの話になるのかもしれません。

追記2017年5月12日
2017年5月12日毎日新聞夕刊(東京版)
《「そもそも」に「どだい」の意味→
だから「基本」 首相発言、答弁書で正当化》
https://mainichi.jp/articles/20170512/dde/041/010/073000c
《「大辞林」(三省堂)に「(物事の)どだい」
という意味があり、「どだい」には「基本」の
意味がある》。
《「そもそも」の意味として「基本的に」を
記載した辞書が実際に存在するかどうか
については、直接答えなかった》とのことです。

答弁書では
《「平成18年に三省堂が発行した『大辞林(第3版)』には、
『そもそも』について、『(物事の)最初。起こり。どだい。』等と
記述され、また、この『どだい』について『物事の基礎。もとい。
基本。』等と記述されている」》とあるようです。

追記2017年5月13日
同日、毎日新聞朝刊
《アクセス
「そもそも」=「基本的に」閣議決定 文法的に「どだい」無理》
https://mainichi.jp/articles/20170513/ddm/041/010/133000c

上にも記した岩佐義樹さんが、
閣議決定した政府の答弁書を
《読んだが文法的に理屈が通らず、
校閲記者の私は頭が混乱した》として、
記事を書かれています。

文法的に理屈が通らないとは以下のような点。

《大辞林で「どだい」の意味があるとする
「そもそも」は名詞用法だ
(文例「そもそもは僕が始めたもの」)。
「どだい」も、その意味とする「基本」も名詞だが、
首相の言う「基本的に」は名詞ではない。
「どだい」に副詞用法もあるが、否定的な文脈で使われる》。

さらに政府が示した大辞林を出版している
三省堂辞書出版部の方の意見も紹介しています。

《「確かに『そもそも』の説明に『どだい』を入れ、
『どだい』の説明に『基本』を入れている。
だがそうは言っても『そもそも』がすぐに
『基本』と結びつくとは言いにくい」》

それらを踏まえて、岩瀬さんは、
今回の答弁書を以下のように結論づけています。

《「そもそも」=「どだい」=「基本的に」は、
どだい無理な解釈だ。答弁書を読む限り
「そもそも」=「基本的に」とする辞書は
なかったのだろう。それを強引に取り繕うのは
およそ教育的とは言えず、国語への悪影響が懸念される。》

なお記事には、大辞林による
「どだい」の語釈・用法
(名詞、副詞)、
副詞「どだい」の用例をあげて説明をしています。
詳細は、リンク先の記事をご覧ください。

追記2017年5月13日午後0時

Dualウィズダム和英辞典で、
「そもそも」をひくと、4番目の語釈に、
《根本的には basically》が出てきます。
「基本的に」ではありませんが、近い。
但し例文・用法はなし。

この点は、すでに4月21日に
三省堂国語辞典の編集委員である
飯間浩明 さんが、ご自身のTwitterで
指摘されています。

ジーニアス和英辞典には、
「根本的に」または
「基本的に」といった意味は
記述されていません。

Weblio和英辞典で「そもそも」を検索
こちらでも「基本的に」「根本的に」の記述なし。
研究社 新和英中辞典、斎藤和英大辞典、
http://ejje.weblio.jp/content/%E3%81%9D%E3%82%82%E3%81%9D%E3%82%82

ルミナス和英辞典でもなし
http://www.kenkyusha.co.jp/modules/08_luminous/index.php?content_id=1

デイリーコンサイス和英辞典もなし。
http://www.sanseido.net/User/Dic/Index.aspx?TWords=%u305d%u3082%u305d%u3082&st=0&DORDER=&DailyJJ=checkbox&DailyEJ=checkbox&DailyJE=checkbox

プログレッシブ和英中辞典にもなし。
https://dictionary.goo.ne.jp/je/44286/meaning/m0u/%E3%81%9D%E3%82%82%E3%81%9D%E3%82%82/

英辞郎 on the webにも、
「基本的に」及び
それにあたる英語の記述なし
http://eow.alc.co.jp/search?q=%E3%81%9D%E3%82%82%E3%81%9D%E3%82%82&ref=sa

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niki

35年以上にわたり、TV、ラジオ、
イベント制作に携わる。30年余
り、放送関係の専門学校講師を
勤め、企画書、台本の書き方を
教える。10年余りホテルの食に
関するHPの制作、コンサルタ
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