2017年9月5日の朝刊各紙に、
京都大学の研究グループが発見した
新たな化合物が、出生前のダウン症を改善できる
可能性があるとの記事が出ていました。
個人的に注目したのが、その化合物の名前です。
研究グループは「アルジャーノン」と名付けたとのこと。
これを聞いて、
「ああ、あの小説か」
と連想される方も多いのでは。
自分はすぐにそう思いました。
自分が読んだ記事には、
命名の由来は書かれていなかったのですが、
おそらくアメリカの作家ダニエル・キイスが書いた
[amazonjs asin=”4150413339″ locale=”JP” title=”アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)”]
からとったのではないかと思います。
この小説は、SF小説の傑作の一つとして知られています。
主人公はチャーリイ・ゴードン
という知能に障害のある男性。
アルジャーノンは、記憶、思考力が高まる
脳手術を受けたハツカネズミの名前です。
そのアルジャーノンが驚異的な能力の向上を
見せたところから、人として初の実験台になり、
脳手術を受けたのでした。
チャーリイはわずか数ヶ月のうちにIQ68から
IQ185への天才となったのでした。
この小説はチャーリーによる経過報告という形で、
一人称で書かれています。
知能の発達につれて文章も変化していくのが
読みどころの一つ。
知能が高くなったチャーリイは、
知りたくなかったことも
知るようになります。
やがて世話をしていたアルジャーノンに
異変が起こります。
それを見たチャーリイは……。
この小説のことが頭にある場合、
自分なら決して新しい化合物に
「アルジャーノン」とは名付けないと思います。
《ダウン症の出生前治療を可能にする新規化合物
-ダウン症iPS神経幹細胞の増殖を促進-
2017年09月05日》
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/170905_1.html
〇今回の実験は妊娠マウスに「アルジャーノン」を投与した。
〇ダウン症のみならず、他の病気にも効果がある可能性が。
《今回発見した化合物アルジャーノンは神経幹細胞の増殖を促進します。
神経幹細胞は発生期だけでなく成体(大人)にも存在することから、
今後は神経新生が関与していることが示唆されている学習・認知分野
(アルツハイマー病など)やうつ症状、神経細胞が脱落する
神経変性疾患(パーキンソン病、ハンチントン病など)、脊椎損傷など、
他の疾患への適用が期待されます。》
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2017/documents/170905_1/01.pdf
上記リンクの中には、
《候補化合物アルジャーノン(ALGERNON:altered generation of neuron)》
とあります。
「altered generation of neuron」
から、ALGERNONとしたようです。
(altered generation of neuron=改変されたニューロンの生成?)
では小説は意識したのか否か?
毎日新聞の記事によれば、
《研究チームは新化合物を「アルジャーノン」と名付けた。
米国の作家ダニエル・キイスの小説「アルジャーノンに花束を」も
意識したという。》
とあります。
https://mainichi.jp/articles/20170905/k00/00m/040/141000c
しかしインターネットコムの
《京大、ダウン症を生まれる前に治す物質「アルジャーノン」発見―「小説は意識せず」
京大は、ダウン症の出生前治療を可能にする新規化合物「アルジャーノン」を発見したと明らかにした。
インターネットコム編集部 2017/09/05 14:05》
https://internetcom.jp/203319/algernon-is-not-algernon
によれば、
《京大によると、今回の発見にたずさわった研究者は
アルジャーノンに花束をという作品を知っているが、
「それにちなんだり、意識したりしたものではない」
と説明している。》
とのこと。
どっちなんでしょうね。
「アルジャーノンに花束を」の
原題は「Flowers for Algernon」。
Algernonは、一般的には
英語圏で男性につけられる名前です。
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